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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今回のテーマは「借地トラブル!半年分の地代を損しないための対策」です。令和5年の東京地裁での最近の裁判例を基に解説します。
この事案は、借地人が地代を滞納したことで、地主側が土地の明け渡しを勝ち取ったものです。地主さんにとって、ぜひ知っておきたい事案なので、詳しくお話ししていきます。
いつもの通り、最初にお断りしておきますが、この裁判例は東京地裁の下級審での判例であり、事例ごとに前提条件が異なるため、すべてが同じように適用されるわけではありません。この点をご理解ください。
土地を貸している以上、地代が滞納されるリスクもゼロではありません。
もし借地人が地代を払ってくれないとしたら、借地契約は解除できるのでしょうか。
結論とすると、地代滞納=借地人の債務不履行として、契約を解除することは可能です。
ただし借地契約の解除のためには、正しい手続きを経なければなりません。
そして、1~2回の地代滞納ですぐに契約を解除できるわけでもありません。現実的に考えると、3~6か月以上滞納が続いている場合や、滞納が繰り返されている場合には、契約解除が認められる可能性があります。
なお、滞納が続いていることを理由に即契約解除、というわけにもいきません。実は民法において、相当期間を設けて催告した後でなければ契約を解除できないとされています。
※ただし、一定の条件を満たす場合には、無催告での契約解除も可能です。借地契約の即時解除については下記記事をご覧ください。
関連記事:地代滞納を理由に借地契約を無催告で解除できる?即時解除が認められた事例を不動産鑑定士が解説!
地代滞納を理由に借地契約を解除する手順は次のとおりです。
1番目の催告、2番目の契約解除通知をしても土地が明け渡されない場合は、裁判所に申し立て、土地を強制的に取り返すことが可能です。
ここで問題となるのが、貸主は「地代を滞納された」と主張する一方、借主は「地代を滞納していない」と主張するケースです。そんなことがあるのだろうか?と思う方もいるかもしれませんが、実際の判例を紹介します。
では、事例の概要です。
昭和60年頃にスタートした借地契約で、地代は月額3万円。契約内容としては、半年ごとに地代をまとめて支払う取り決めでした。令和3年、地主さんは、直近の6か月分の地代が未払いであることを理由に、契約解除を通知しました。
これに対し、借地人は「1月から6月末までの6か月分の地代は前年の12月末に先払いしている」と主張。しかし、実際の契約は後払い、つまり1月から6月末までの地代を6月末に支払うという契約でした。この点ですでに借地人の主張には無理がありました。
地主さんは何度も借地人に地代の滞納について説明したものの、聞き入れてもらえず、最終的に裁判所に助けを求めることとなりました。
裁判の結果、借地人の主張は退けられ、地主さんの契約解除と土地の明け渡しが認められました。借地人は訴訟を起こされた後、慌てて未払い分の地代を支払いましたが、時すでに遅く、契約解除を撤回することはできませんでした。
参考:令和5年1月23日、東京地裁、判決 令4(ワ)216号 建物収去土地明渡等請求事件
最後に不動産鑑定士である私からのアドバイスです。
今回の判例のようなトラブルを防ぐためには、地代の支払いが「先払い」か「後払い」かを契約で明確にしておくことが重要です。
また、半年払い、年払いにしている場合は、月払いに切り替えることを検討してください。その方が管理がしやすく、未払いのリスクも減ります。
今回のように、借地人に「とぼけられる」と、回収が難しくなる可能性がありますので、注意しましょう。
以上、今回は「借地トラブル!半年分の地代を損しないための対策」についてお話ししました。次回もお楽しみに。それでは、今回はここまで。
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