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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今回の話題は、少し珍しいケースではありますが、「先代の地主と借地人との人間関係が地代に影響するのか?」というテーマで、地主さんにとって参考になるケーススタディとして取り上げたいと思います。
最初に前提知識として、地代の決め方について紹介します。
地代は一般的に、「土地の価格」や「周辺の地代相場」「期待利回り」「借地契約の種類」などを考慮して決定します。「借地人と地主の関係」は考慮されないケースもあれば考慮されるケースもあります。
本題から外れるため詳しい計算方法は割愛しますが、一般的に住宅用地なら土地価額×2~3%、店舗・事務所用地なら土地価額×4~5%が年間の地代相場とも言われることもありますが、これはケースバイケースによってかなり変わるので、実際のところは不動産鑑定を取得する必要があります。
さて、実は借地人と地主の関係が地代に影響を与えるかどうかが争点となった事例もあるのです。
まず、事案の概要を説明します。このケースは、令和5年に東京地裁で判決が出たもので、地主による賃料増額が一部認められたものです。もともとの月額地代は7万円でしたが、地主は16万円への増額を請求。しかし、最終的には1万円増額の8万円で判決が下されました。
ここで注目すべきは、増額がわずか1万円だったということではなく、争点の一つであった借地人の主張が通ったのかどうか、という点です。
この借地人の主張は少し変わっており、借地人の父親と地主の父親が昔は仲が良く、借地人の父親が地主の父親の就職を2回も斡旋していた、というものです。借地人は、「親父が君たちの親父の就職を世話したんだから、長年にわたり君たちは利益を得ていたはずだ。それを考えれば、賃料を値上げする理由はないはずだ」と主張しました。
では、裁判所はこの主張に対してどう判断したのでしょうか。結論としては、借地人の主張は認められませんでした。
その理由は、単純に「昔の話であり、現時点での賃料増額に影響を与える理由にはならない」というものです。具体的には、時間の経過によって人間関係は消滅または希薄化しており、それが判断の根拠となりました。
参考:裁判年月日 平成5年1月12日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(ワ)24711号
事件名 賃料増額確認請求事件
不動産鑑定士である私から地主さんへの個人的なアドバイスです。
もし、今回のケースが先代同士の昔の話ではなく、最近の話であれば、結果が違っていたかもしれません。
つまり、借地人に対して大きな借りを作ってしまうと、後々地主が不利になる可能性があるということです。また、先代同士が良好な関係だったとしても、次の世代も同じように仲良くやれるとは限りません。特に現代では、お互い顔を知らないことも珍しくありません。
地主としては、地代の増額をスムーズに進めるためにも、日頃から借地人とのコミュニケーションを大切にしておくことが重要です。
地代は通常、「土地の価格」「周辺の地代相場」「期待利回り」「借地契約の種類」などを考慮して決めますが、「借地人と地主の関係」が考慮される可能性もゼロではありません。
もし借地人との関係に何らかの懸念があり、地代の決め方や増額に迷っている場合には、一度当事務所にご相談ください。
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