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こんにちは、不動産鑑定士の三原です。
昨今はオーナーチェンジ物件を購入する不動産オーナーも増えてきています。
そんな中、前所有者の親族が安価な家賃で暮らしているオーナーチェンジ物件を購入したものの、周辺相場くらいには家賃を値上げしたいと考えている新オーナーの方もいるのではないでしょうか。
このような訳あり物件の賃料値上げを勝ち取る秘訣について、判例を参考にしながら、不動産鑑定士の目線で解説します。
前所有者の親族が安価な家賃で暮らしているオーナーチェンジ物件の家賃値上げ裁判例
東京地裁の令和4年の判例(令和2年(ワ)29854号)をもとに、実際の事例を通して賃料値上げのポイントを分かりやすく解説します。
事案の概要
ビルの所有者Aさんは、そのビル内の一室を親せきのCさんに、周辺相場と比べると低水準な、家賃12万円で貸していました。
後にAさんが、そのビルをBさんに売却しました。
新所有者となったBさんは、Cさんに対して家賃を値上げしたいと考えました。
Bさんは、新規に貸す場合、現在の家賃12万円を21万円に引き上げることができると主張しています。
判決の結果
結論として、裁判所が認めた賃料の値上げは、月額2万円の増額でした。元々の12万円から2万円を加算して、改定後の賃料は14万円になったという判決です。
裁判所は、裁判鑑定を行い、鑑定人の鑑定額をほぼそのまま採用しました。
オーナーチェンジで「親族間の賃貸借」より家賃を値上げする秘訣
上記の例で、なぜ新オーナーの希望額より少ない値上げしか認められなかったのか、不動産鑑定士としての見解を紹介します。
私が考えるに、判決が家賃14万円にとどまった理由は、主張方法に問題があったからだと思います。
オーナーチェンジで「親族間の賃貸借」より家賃を値上げする秘訣として、ぜひ次の2点を覚えておいてください。
- 恩恵的な関係の解消を強く主張するべき
- 新規賃料の設定額は高くしすぎない
1. 恩恵的な関係の解消を強く主張するべきだった
このケースで重要なのは、AさんとCさんの関係が「親族間の賃貸借」であり、恩恵的な関係が存在していた点です。
これは所有者が変わったことで、その恩恵的な関係を解消することが可能になったと考えられます。
つまり、前オーナーが所有していたときは、親族間の賃貸借だったから特別に安く貸していたという点を、もっと強調して主張すれば、賃料の引き上げ幅が大きくなった可能性があります。
2. 新規賃料の設定額は高くしすぎない
恩恵的な関係を解消することになったとしても、現実的には、12万円から21万円への大幅な家賃値上げは難しいでしょう。
そのためため、最初から新オーナーが16〜17万円程度の賃料を主張していれば、もう少し高い値上げが認められたかもしれません。
オーナーチェンジ物件の家賃を値上げするときは不動産鑑定士に相談!
オーナーチェンジ物件の賃料値上げを検討する場合、まずは不動産鑑定士に相談することをお勧めします。
不動産鑑定士は、法律の観点ではなく、不動産の経済的な観点から、賃料値上げが理論的に通るか、リスクは何かをアドバイスすることができます。そのアドバイスを基にして、今後の方針を決めると良いでしょう。
当事務所でもオーナーチェンジ物件の家賃の値上げについて相談を承っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
