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こんにちは、不動産鑑定士の三原です。今回のテーマは「絶対に見逃してはいけない。更新前の無断増改築」についてお話しします。
地主さんが借地契約を更新する際、現地を何も確認しないと、無断増改築による思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
借地契約の更新が迫っている地主さんは、ぜひ参考にしてみてください。
借地上の建物の増改築にはオーナーの承諾が必要なのが一般的
そもそも借地上の建物の増改築は、原則として借地人が自由に行えます。借地上の建物は、借地人が所有しているためです。
ただし現実的に考えると、借地上の建物を勝手に増改築する行為は、地主にとってリスクのあるものだといえます。
そこで借地契約の中で、借地上の建物の増改築を禁止する特約を付けるケースが多いです。(いわゆる増改築等禁止特約)
増改築等禁止特約を結んでいる場合は、地主に無断で増改築してはなりません。
無断増改築後に借地契約を更新するとどうなる?
増改築等禁止特約があるにもかかわらず、無断で増改築がされていた。
しかし、増改築に地主が気が付かず、借地契約を更新すると、どのようなことが起こるのでしょうか。
実際の事例を紹介します。
ある地主さんが、20年経過した借地契約を更新しました。しかし、契約更新後に、実は借地人が無断で建物の増改築をしていたことが発覚したのです。
もし契約更新前にこの事実がわかっていれば、契約を破棄することも考えられたはずです。
しかし、すでに契約は更新されてしまいました。この状況で、地主さんは更新前にあった無断増改築を理由に借地契約を解除することができるのでしょうか?
結論としては、平成3年の東京地裁の裁判例に基づくと、契約解除は難しい可能性が高いということになります。
理由は、すでに契約更新を行っているため、その時点で新たな契約が成立しているからです。つまり、双方が合意して更新した以上、その更新後の契約内容が優先されるため、更新前の違反行為を理由に契約解除することは原則としてできないということです。
この事例を踏まえると、地主さんは契約更新を行う前に、無断増改築がされていないかをしっかりと確認しておくことが重要だということがわかります。
参考裁判例
裁判年月日:平成3年10月30日
裁判所名:東京地裁
裁判区分:判決
事件番号:平2(ワ)13230号 建物収去土地明渡請求事件
裁判結果:棄却
更新料の視点からも借地上の建物の無断増改築に注意
不動産鑑定士としては、更新料の視点からも、借地契約の更新前は増改築には注意すべきといえます。
更新料とは、借地契約を更新するときに、地主から借地人へ請求する金銭です。
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更新料にはいくつかの性格がありますが、主に「契約を円満に進めるための解決金」としての性格が強いとされています。
たがって、更新料を受け取って契約を更新した後に、更新以前の契約違反を持ち出すことができないというのは、自然なことだといえるのではないでしょうか。
逆に言えば、契約更新の際には、無断増改築があった場合にきちんと指摘し、その問題を解決する方法を取ることが大切です。
例えば、増改築承諾料を受け取る、または更新料を上乗せするなどして、解決金としての役割を果たしておくべきです。更新前に問題を解決しておかないと、後からそれを持ち出すことは難しくなります。
借地上の建物が無断増改築されていたら不動産鑑定士に相談!
このように、更新前に無断増改築があった場合は、その問題を更新契約時にきちんと確認し、適切に対応することが重要です。
もし無断増改築がされていたら、更新せずに契約を解消することも視野にいれつつ、更新料を上乗せしてもいいでしょう。
しかし、更新料を上乗せするといっても、法外な金額を要求しては、トラブルに発展する可能性もあります。
いくらくらいの更新料なら適正額といえるのかは、ぜひ不動産鑑定士に相談して決めてみてください。当事務所でも、地主さんからの相談を承っております。