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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今回のテーマは「【コロナ禍】新規貸し出しで、すぐに賃料が滞った場合、明け渡しは可能か?」です。今回は令和4年の東京地裁での判例をもとに解説します。
この事案では、コロナ禍を理由に賃料を滞納した賃借人に対して、明け渡しが認められたもので、オーナー側が勝訴した事例です。
前回のお話では、コロナ以前から賃借していた契約に関する賃料滞納の事案を取り上げましたが、今回はコロナ禍の真っただ中に新たに契約したテナントとの賃料トラブルです。不動産オーナーの皆さんにとっても、非常に参考になる内容ですので、解説していきます。
まず最初にお断りしておきますが、今回取り上げる判例は下級審のものであり、事例ごとに前提条件が異なるため、必ずしも一般化できるとは限りません。この点にご留意ください。
それでは、事例の概要です。
令和3年のコロナ禍において、オーナーは月額16万円で1階の店舗部分をテナントに貸し出しました。しかし、このテナントは入居後すぐに賃料を滞納し、その主な理由として「新型コロナウイルスの感染拡大の影響」を挙げました。また、修繕の依頼をしても対応してもらえないことを理由に賃料を支払わないという典型的な主張も行いました。
さて、裁判所の判断ですが、オーナーの主張である「契約解除」と「明け渡し」を認めました。その理由は、新型コロナウイルスによる社会的影響がすでに契約時点で明らかであったため、コロナ禍を理由に賃料不払いを正当化することはできない、というものです。
最後に私からのアドバイスです。
多くのオーナーが空室の悩みを抱えているかと思いますが、今回のように入居後すぐに賃料を滞納するテナントも存在します。もしそのようなテナントにあたった場合、裁判にかかる費用や、勝訴しても資金的余裕のないテナントからは滞納賃料を回収できない可能性もあります。そのため、テナント審査は慎重に行うことが重要です。
以上、「【コロナ禍】新規貸し出しで、すぐに賃料が滞った場合、明け渡しは可能か?」についてお話ししました。今回はここまでです。
参考:令和4年9月30日、東京地裁、判決 令4(ワ)7550号(2) 建物明渡等請求事件