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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。今日のテーマは「借地人に大きな借りを作ることの落とし穴:地代変更のケース」についてです。
今回の話題は、少し珍しいケースではありますが、「先代の地主と借地人との人間関係が地代に影響するのか?」というテーマで、地主さんにとって参考になるケーススタディとして取り上げたいと思います。
まず、事案の概要を説明します。このケースは、令和5年に東京地裁で判決が出たもので、地主による賃料増額が一部認められたものです。もともとの月額地代は7万円でしたが、地主は16万円への増額を請求。しかし、最終的には1万円増額の8万円で判決が下されました。
ここで注目すべきは、増額がわずか1万円だったということではなく、争点の一つであった借地人の主張が通ったのかどうか、という点です。この借地人の主張は少し変わっており、借地人の父親と地主の父親が昔は仲が良く、借地人の父親が地主の父親の就職を2回も斡旋していた、というものです。借地人は、「親父が君たちの親父の就職を世話したんだから、長年にわたり君たちは利益を得ていたはずだ。それを考えれば、賃料を値上げする理由はないはずだ」と主張しました。
では、裁判所はこの主張に対してどう判断したのでしょうか。結論としては、借地人の主張は認められませんでした。その理由は、単純に「昔の話であり、現時点での賃料増額に影響を与える理由にはならない」というものです。具体的には、時間の経過によって人間関係は消滅または希薄化しており、それが判断の根拠となりました。
最後に、私から地主さんへの個人的なアドバイスです。もし、今回のケースが先代同士の昔の話ではなく、最近の話であれば、結果が違っていたかもしれません。つまり、借地人に対して大きな借りを作ってしまうと、後々地主が不利になる可能性があるということです。また、先代同士が良好な関係だったとしても、次の世代も同じように仲良くやれるとは限りません。特に現代では、お互い顔を知らないことも珍しくありません。
地主としては、地代の増額をスムーズに進めるためにも、日頃から借地人とのコミュニケーションを大切にしておくことが重要です。
以上、今回は、「借地人に大きな借りを作ることの落とし穴:地代変更のケース」のお話でした。今日の話はここまで。
参考:裁判年月日 平成5年1月12日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決
事件番号 令2(ワ)24711号
事件名 賃料増額確認請求事件