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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。今日のテーマは「勝手に地代を減額してきた賃借人を撃退した裁判例」についてです。
今回は、令和3年に東京地裁で出された判決について解説します。この事案は、地代の増減額をめぐるトラブルで、最終的に地主による土地の明け渡しが認められたケースです。具体的には、借地人が地代を一方的に減額して支払った結果、契約違反となり契約が解除されました。この判決は、地主にとって非常に参考になるものですので、詳しく見ていきたいと思います。
まず、注意していただきたいのは、今回取り上げる判決は東京地裁のものであり、各事例ごとに状況や前提が異なるため、必ずしも一般化できない場合があるという点です。この点を踏まえた上でご理解いただければと思います。
事案の概要を説明します。問題となった土地の地代は月額12万円弱で、前回の契約更新時に500万円の更新料が支払われていました。今回の更新に際して、地主は税金の増加を理由に、月額5千円の地代の値上げと、前回同様の500万円の更新料を請求しました。これは地主にとって当然の要求でしたが、借地人はこの増額と更新料に不満を持ち、月額12万円の地代を勝手に6万円弱に減額して支払うという行動に出ました。
これを受けて、地主は借地人に対し、賃料の不足分と更新料の支払いを求め、支払わない場合は契約を解除する旨の通知を出しました。しかし、借地人はこれに応じず、合計3回にわたって支払いを求められたにもかかわらず支払いを行いませんでした。結果として、地主は債務不履行を理由に契約解除と明け渡しを求める訴訟を提起しました。この訴訟で、地主の主張は認められたのです。
結論として、借地人が地代を滞納したことが債務不履行に該当し、契約解除が正当と判断されました。その理由の一つは、借地人が全額支払うべき地代を勝手に減額したことです。借地人は、少なくとも賃料の一部を支払い、残額を供託すべきでしたが、それを怠り、契約違反に至ったのです。訴訟が提起された後、不足分を支払いましたが、その時点ではすでに遅く、裁判所は借地人の一方的な行動を問題視しました。
最後にアドバイスです。もし借地人が勝手に地代を減額してきた場合、一部未納の状態を利用して、契約解除を検討することが一つの手段となるでしょう。また、今回の地主が勝訴した要因として、支払い期限を設定し、契約解除の通知を3回行ったことが挙げられます。裁判所も、繰り返し通知を無視した借地人の行動を重く見ています。借地人が法律を理解せずに一方的に減額したことも大きな要因です。実際に、賃料を勝手に減額して送金してくるケースは少なくありませんので、地主の方々には今回の事例をぜひ参考にしていただきたいと思います。
以上、今回は、「勝手に地代を減額してきた賃借人を撃退した裁判例」でした。今日の話はここまで。
参考:令和5年2月28日、東京地裁、判決 令3(ワ)19551号 建物収去土地明渡請求事件