地主のための基礎知識

生前贈与

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こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今回のテーマは「税金ゼロで土地を分割贈与する方法」です。

「贈与」という言葉を聞いて、どんなことを思い浮かべますか?
多くの方は、お金をあげたりもらったりすることを想像されるかもしれません。しかし、贈与はお金に限りません。不動産を贈与することも可能です。今回は、不動産の贈与について、できるだけ分かりやすく説明します。

今回お話しする内容は以下の通りです:

  1. 贈与とは
  2. 贈与税
  3. 不動産の贈与
  4. 不動産贈与の具体例
  5. 注意点

それでは、順番に見ていきましょう。

  1. 贈与とは

贈与とは、ある財産を無償、つまりタダで「あげます」「もらいます」という双方の合意に基づくものです。一方的に「あげる」と言っても、受け取る側が拒否すれば贈与は成立しません。双方の同意があって初めて成り立つものです。

  1. 贈与税

次に、贈与税について簡単に説明します。
贈与税は、財産をもらったときに課される税金ですが、大きく分けて以下の2種類があります。

(1) 相続時精算課税

少し難しい言葉ですが、簡単に言うと、60歳以上の親が、子どもがマイホームを購入する際などに金銭サポートとして大きな額(例えば1000万円や2000万円)を一気に贈与する場合に利用される制度です。
この制度では、贈与時には贈与税はかかりませんが、相続時に相続税として課税されます。つまり、税金を支払うタイミングを先送りする仕組みです。

(2) 暦年課税

こちらは年間110万円を超えた贈与に対して課税される仕組みです。年間110万円以下の贈与であれば非課税となります。この制度を活用し、毎年少しずつ分割して贈与する方法が一般的です。今回のテーマはこの暦年課税を使った方法についての説明です。

  1. 不動産の贈与について

不動産もお金と同じように、分割して贈与することが可能です。ただし、不動産は財産価値が大きいため、一度に贈与すると贈与税が高額になる可能性があります。
そこで、年間110万円以下に分割して贈与することで、税金がかからないように調整します。

  1. 不動産贈与の具体例

具体例で考えてみましょう。

たとえば、父親が所有する2000万円の土地があるとします。この土地の共有持分を毎年少しずつ子どもに贈与する場合、「共有持分」という形で分割することになります。

ポイントは、暦年贈与の非課税枠110万円が、贈与する側(父親)ではなく受け取る側(子ども一人ひとり)に適用されることです。
例えば、子どもが10人いれば、父親は年間1100万円分の財産を減らすことが可能です。

ここでは子どもが2人の場合を想定します。1人あたり毎年100万円ずつ贈与すれば、父親は年間200万円分の財産を減らせます。この場合、2000万円の土地を10年かけて子どもたちに贈与することが可能です。

この方法を使えば、相続税の節税だけでなく、将来のトラブル防止にも役立つ可能性があります。ただし、ケースバイケースで最適な方法は異なるため、詳細な計画が必要です。

  1. 注意点

ここでは、不動産の分割贈与を行う際の注意点を3つ挙げておきます。

(1) 名義変更に伴う費用が発生する

不動産の名義変更を登記する際には、費用がかかります。例えば、110万円程度の贈与であれば、不動産取得税や登録免許税として6〜7万円程度が必要です。

(2) 共有持分がトラブルの種になる可能性がある

不動産を分割して贈与すると、新たに共有関係が生じます。この共有関係が、将来的に親族間のトラブルの原因となることがあります。特に相続対策の一環として贈与を行う場合は、「節税」だけでなく「争族対策」にも目を向ける必要があります。

(3) 贈与後すぐに相続が発生するリスク

贈与後に相続が発生すると、一定の期間内に贈与された分について相続税が課される場合があります。
例えば、2024年以降は相続発生前の7年間に行われた贈与が相続税の課税対象となります。つまり、最初の3年分のみ非課税で、それ以降の7年分は課税対象となります。このため、贈与を行う場合は、贈与者が元気なうちに早めに計画をスタートすることが重要です。

専門家への相談をおすすめします

不動産の分割贈与には他にもさまざまな注意点があるため、詳細については専門家への相談をおすすめします。

以上、「税金ゼロで土地を分割贈与する方法」について解説しました。参考になれば幸いです。