立退き・契約解除について

借地権|むしろ引越代を出して退去させた方がお得なケース

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借地権|むしろ引越代を出して退去させた方がお得なケース
こんにちは、不動産鑑定士の三原です。
今回は「借地権の立退き交渉において、引越代を出して退去を促した方がお得なケース」について解説します。不動産オーナーの方にとって役立つお話ですので、ぜひ参考にしてください。

借地権の立退きで起こりがちなトラブル
今回の話は、地主さんが借地契約の解除判決を取得した後のお話です。賃料不払いで裁判を起こし、判決を勝ち取ったとしても、実際には元借地人がすんなり退去してくれないケースが多くあります。
特に、元借地人が癖の強い性格だった場合、判決が出た後も手間と時間がかかり、地主さんにとって大きな負担となることがあります。実際に起こったケースをご紹介しましょう。

実例:借地契約解除後も退去しない借地人
東京都大田区で発生した事例です。

  • 土地の概要:約50坪、月額地代5万円
    借地人の状況:平成28年から地代を滞納
    地主の対応:土地明け渡しの判決を取得

ところが、判決後に問題が発生しました。元借地人は土地の不法占有を続けた上、地主に対して「地代は損害賠償額でカバーできるので借地権は有効」などと主張しました。さらには、地主に対して慰謝料7,000万円を請求するという無茶な訴えまで起こしてきたのです。
このケースでは、元借地人に弁護士は付いておらず、お金がないことが原因と考えられます。借地人は追い詰められ、現実的に退去する準備ができなかったのです。

強制退去の費用と負担
このような場合、地主が再度裁判所に申し立て、執行官を雇い強制的に退去させる必要があります。さらに、建物の解体費用も地主が負担しなければなりません。元借地人にこれらの費用を請求することは可能ですが、お金がない場合、回収は困難です。

引越代を出すことも選択肢
こうした状況では、地主側が一定の費用(引越代など)を負担してでも、早期解決を目指す方が結果的に得をするケースもあります。
理由はシンプルです。裁判費用や解体費用を差し引いても、土地の価値が回復するメリットが上回る場合があるからです。たとえば、50坪の土地が空いた状態で戻ってくれば、その土地の市場価値が大幅に向上することもあります。
引越代を提示して合意退去を提案することで、長期化する争いを避けることができるかもしれません。

まとめ
借地契約解除後の立退き交渉は、判決が出た後もスムーズに進むとは限りません。裁判費用や強制執行の手間を考えると、引越代を負担して早期解決を図る方が、経済的にも時間的にも効率的な場合があります。
どのくらい費用を出すべきかは、土地の価値や状況によりますので、専門家に相談することをおすすめします。

裁判例の詳細

  • 以下は今回参考にした裁判例です:
    • 裁判年月日:令和4年7月15日
    • 裁判所名:東京地裁
    • 事件番号:令2(ワ)845号
    • 事件名:建物収去土地明渡請求等事件

以上、今回のテーマは「引越代を出して退去させた方がお得なケース」についてでした。不動産に関するご相談があれば、ぜひお気軽にお問い合わせください!