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こんにちは、不動産鑑定士の三原です。 今日は「店舗立退き。オーナーが勝つための3つのポイント」についてお話ししたいと思います。
オーナーが立退きを求める「正当事由」
店舗の立退きには、テナントとの交渉や裁判を経て進める必要がありますが、立退きが裁判で認められるためにはオーナーが立退きを求める「正当事由」が必要です。今回は、立退きを有利に進めるための「正当事由」として、典型的な3つのポイントを解説します。
- 築年数
- 耐震性不足
- 多額の工事費用
1. 築年数
まず一つ目は築年数です。立退きが認められている判例の多くは、築40年以上の建物に関するものです。一般的に築20年~30年の建物はまだ使用可能とされ、建て替えるよりも修繕して使う方が現実的だと考えられています。そのため、立退きが認められるには、築年数が相当経過していることが重要です。
2. 耐震性不足
次に重要なのが耐震性不足です。最近では、地震対策が重要視されており、建築士による耐震診断を依頼し、**「耐震性に問題がある」**とされるレポートを手に入れることがポイントです。地震で建物が壊れることにより命の危険が生じるため、耐震性不足は立退きの大義名分として有力に認められます。これにより、テナントに対して「安全のために立退きをお願いする」という正当な理由を示すことができます。
3. 多額の工事費用
三つ目は多額の工事費用です。耐震診断の結果を踏まえ、ビルを今後も使用するために必要な耐震補強工事の見積もりを取得することが大切です。工事を行うためにはテナントに一時的に退去してもらう必要があり、その補償額も考慮しなければなりません。このように、多額の工事費用が発生する場合、立退きをお願いするしかないという合理的な理由が生まれます。
立退きの説得力を高めるストーリー作り
以上の3つのポイントを踏まえて、テナントに退去してもらい、ビルを解体・撤去し、新たな建物を建てるという選択が最も合理的であるという説得力のあるストーリーを作り上げていくことが重要です。
繰り返しになりますが、立退きが裁判で認められるためには「正当事由」が必要です。古ビルの建替えに関しては、判例を見る限り、今回紹介した築年数、耐震性不足、工事費用の三つのポイントから説明しているケースが圧倒的に多いです。
テナントとの交渉を進める場合でも、裁判を起こす場合でも、これらの知識を持っておくことが、スムーズな交渉や有利な結果に繋がるでしょう。
参考判例
- 裁判年月日:令和4年7月20日
- 裁判所名:東京地裁
- 裁判区分:判決
- 事件番号:令2(ワ)12971号
- 事件名:建物明渡請求事件
- 文献番号:2022WLJPCA07208010
店舗立退きは退去のどのくらい前に通知すべき?
さて、スムーズにテナントを退去させたい場合、退去のどのくらい前から立退きを通知すべきかも知っておく必要があります。
借地借家法では契約の更新を拒絶する通知は契約満了の6ヵ月前から1年以内に行う必要があるとされているため、これだけの期間で立退きが完了すると思っている方もいるかもしれません。
しかし実際には、立退き条件などで揉めて裁判になると、判決までに3年程度かかってしまうこともあります。
そのため立退きしてもらいたい場合には、計画的に手続きを進めていく必要があるのです。
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店舗立退料はいくらが相場?
店舗に立ち退いてもらう場合、立退料を要求されることもあります。
そもそもも借地借家法では、借家の賃貸借契約を終了させるにあたって「正当事由」が必要とされていますが、先述した築年数・耐震性不足・多額の工事費用などの理由だけで正当事由と認められるとは限りません。
そこで実務上、オーナー側の正当事由を補完するために、オーナーから店舗側に金銭を支払うことで立ち退きが認められるようになりました。この金銭が、便宜上「立退料」と呼ばれています。
立退料は家賃の40か月分程度になることもあれば、173か月分程度になることもあり、一概にいくらと決まっているものではありません。
そのため立退料をいくらにすべきか判断するためには、不動産鑑定士などの専門家に相談することをおすすめします。
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店舗立退きに関する悩みも不動産鑑定士に相談できる
以上、今回は「店舗立退き。オーナーが勝つための3つのポイント」についてお話ししました。
店舗立退きでは、オーナー側の正当事由だけではなく、どのくらい前に通知するのか、立退料をいくらに設定するのかなど、留意すべきポイントが多々あります。
もし店舗立退きについて悩んでいる場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。個別の事例にあわせて、最適な方法をご提案いたします。