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こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
建物の賃料(家賃)について、修繕費用をテナントに負担させることについてお話しします。
一見、テナントに修繕費を負担してもらうことは問題ないように思えるかもしれません。
しかし実は、その後の賃料交渉や立退き交渉において、テナントに「借り」を作ってしまうことが、後々の問題を引き起こすことがあります。
今回は修繕費を賃借人負担とするメリット・デメリットについて、不動産鑑定士が実際の裁判例を参考に解説します。
修繕費を賃借人負担とするメリット
修繕費を賃借人に負担してもらうことには、次のようなメリットがあります。
- 管理コストの削減
- 修繕対応の手間削減
通常、賃貸物件で発生する修繕費用はオーナーが費用を負担します。これを賃借人の負担とすれば、コストを抑えられることも事実です。
また、賃借人が自分で業者を手配してくれれば、修繕対応にかかる手間も大きく削減できます。
修繕費を賃借人負担とするデメリット
修繕費を賃借人負担とするメリットを魅力に感じる方もいるかもしれませんが、実はオーナーとして見逃せないデメリットも存在します。
それは、賃料の値上げが難しくなる可能性があることです。
令和3年に実際にあった事例を見てみましょう。賃貸契約自体は平成10年頃から事務所・倉庫としてスタートし、家賃は当初37万円でした。その後、約20年が経過し、建物の外壁塗装工事を行う必要が生じました。このときテナントは、約300万円を負担して外壁塗装工事を行いました。
その後、オーナーは建物の固定資産税が増加したことを理由に、テナントに賃料の値上げを請求しました。しかし、裁判所は賃料の値上げを認めませんでした。その理由として、「現行賃料は市場賃料よりも低いが、テナントが修繕費用を負担してきたことを踏まえ、現行賃料を合意した経緯があるため、不合理とは言えない」と判断されたのです。
参考にした裁判例
裁判年月日:令和3年12月27日
裁判所名:東京地裁
裁判区分:判決
事件番号:令2(ワ)26679号
事件名:賃料増額請求事件
文献番号:2021WLJPCA12278008
この事案から分かることは、テナントに修繕費用を負担させることで「借り」を作ってしまうと、その後の賃料交渉がうまくいかないリスクがあるということです。オーナーとしては、賃料を引き上げたいと考えることはありますが、テナントに大きな修繕費用を負担させると、後々その負担が交渉に影響を与えてしまいます。
例えば、「自分が工事費を出すので修繕を行いたい」というテナントもいるかもしれませんが、修繕費を負担することで後の交渉に不利になる可能性があることをしっかりと考慮しておくべきです。
修繕費を賃借人負担とする注意点
今回の判例から学べることは、テナントに修繕費用を負担させることによって、交渉の場面で不利な立場になってしまうリスクがあるということです。修繕費を負担させる際は、その後の賃料交渉や立退き交渉に与える影響を十分に考慮することが重要です。
とくに現行賃料が相場よりも低い場合は、修繕費を賃借人負担とするより、賃料を値上げしたほうが、長期的なメリットが大きい可能性があります。
当事務所では不動産オーナーの賃料値上げもサポートしておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください

