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こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
最近、物価が上がり、土地の価格も上昇しています。これにより、オーナーにとって賃料の値上げが必要と感じる場面も多いことでしょう。しかし、テナント側は景気の先行きに不安を抱え、値上げに対して渋ることが多いのも事実です。
場合によっては家賃の値下げ交渉をされてしまうかもしれません。
では、こうした将来の景気不安をどのように考慮し、家賃の値下げ交渉にはどう対抗するべきなのか、実際の判例を参考にして解説します。
令和4年の地代に関する判例を見てみましょう。
この事案では、令和元年7月に、地主が賃料の値上げ意思表示をしました。
しかし借り手が「新型コロナウイルスの感染拡大の影響で地代値上げの事情はない。むしろ減額してもらいたい」と主張しました。
結果として、裁判所はこの主張を却下しました。
その理由は、新型コロナウイルスの影響は「地代値上げ請求の時点より後」の事情であり、その影響を賃料改定の理由として採用することはできない、というものでした。
(コロナが日本流行りだしたのは、令和2年なので、賃料の値上げをした令和元年よりも後ですね)
この事案で分かるとおり、「賃料の値上げ意思表示」をいつ行ったのかは非常に重要です。
賃料改定を行う際は、意思表示をした時点の経済状況を基準にします。
この意思表示をした時点は、基本的に変更できません。
この「意思表示を行った時点」のことを「価格時点」と呼びます。
参考文献
令和4年4月15日 東京地裁判決
事件番号:令2(ワ)27478号
事件名:賃料増額請求訴訟事件
文献番号:2022WLJPCA04158012
不動産鑑定士として、私がアドバイスするのは、賃料改定を行う際には、まず「価格時点」を確定することが最も重要だということです。
もし賃料改定を希望する場合、その時点での経済状況を基準に交渉を進めることになります。
現状のように景気が不安定な時期には、早めに値上げの意思表示を行い、その「価格時点」を確定させることが賢明です。意思表示は、メールや内容証明付き郵便などで証拠を残しておくと良いでしょう。
もし今後景気が悪化した場合でも、価格時点を早い段階で確定しておけば、値下げ交渉を撃退することが可能です。オーナーの立場としては、適切なタイミングでの価格時点の決定が、賃料改定交渉において強い武器となります。
さて、今回紹介したのは、「新型コロナウイルスの感染拡大による経済状況が悪化したから、地代を下げてほしい」という事例でした。
経済状況の悪化を含め、値下げ交渉にはよくあるパターンがあるので、あらかじめ把握しておきましょう。
「景気が悪くなりそうだから、今のうちに家賃を下げてほしい」と主張された経験がある地主さんもいるのではないでしょうか。
しかし、前述の判例が示すとおり、景気が悪化しているからといって、それが必ずしも賃料改定の理由になるとは限りません。
実際に景気が悪化して経営状況が悪くなった後、その時点で改めて減額請求することは可能ですが、それ以前に「価格時点」が設定されていれば、減額が認められないこともあります。
「隣のテナントはもっと安い」といった理由で、賃料減額を主張されることもあります。
確かに周辺相場は、賃料判断の材料の一つです。
しかし、まったく同じ条件の不動産(立地はもちろん、階数、広さ、設備、契約時期など)は、2つと存在しませんから、単純な比較だけでは値下げの根拠としては不十分です。
物件の状況を客観的に示せば、減額が認められないこともあります。
これは不動産に限った話ではありませんが、「長く契約するから安くしてほしい」という交渉は、よくある話です。
これは契約内容によっては、交渉の余地がある提案でしょう。
長期契約によって空室リスクを軽減できれば、互いにメリットがあります。
しかし、あまりに安価な賃料で契約すると損をしてしまいますから、不動産鑑定士などと相談し、適正な賃料を見極めることが重要です。
賃料の値上げ交渉においては、景気悪化の影響を考慮しつつも、まず「価格時点」を決めることが重要です。早めに意思表示を行い、その時点を確定させることで、後々の値下げ交渉を避けることができます。証拠を残すためにも、メールや内容証明で通知を送ることをおすすめします。
賃料の値上げ交渉においては、景気悪化の影響を考慮しつつも、まず「価格時点」を決めることが重要です。早めに意思表示を行い、その時点を確定させることで、後々の値下げ交渉を避けることができます。証拠を残すためにも、メールや内容証明で通知を送ることをおすすめします。
また、減額前の地代が適正であることを客観的に示すためには、不動産鑑定士に評価してもらうことも検討してみてください。当事務所でも減額交渉をされている地主さんをサポートしておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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