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こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
賃料値上げをオーナーがテナントに伝える際、注意が必要です。値上げを伝える方法には、例えば「来月から坪あたり1万円の〇円にさせていただきます」とはっきり言い切る方法や、「坪1万円の〇円をご検討ください」と相手の反応を伺う方法があります。
後者の「ご検討ください」といった表現は、相手の懐事情を考慮して配慮を示すものですが、実際には後で法的な争いが起こるリスクもあります。テナント側が「これは単なる相談であって、正式な意思表示ではない」と主張する可能性があるからです。
そこで今回は、テナントへ値上げはどう伝えるべきなのか、判例を基に解説します。
曖昧な値上げ依頼で賃料増額の意思表示が認められなかった事例
実際の判例を見てみましょう。あるオーナーは、借り手に対して「坪単価1万5千円位をご検討ください」という書面を送付しました。オーナーはこの書面を賃料増額の意思表示だと主張しましたが、裁判所はその表現を「賃料額の改定を検討するよう依頼したにすぎない」と解釈しました。このため、オーナーの意思表示による賃料増額は認められませんでした。
テナントに対して思いやりのある言葉を使った結果、オーナーに不利な判決が下されてしまったのです。
参考文献:
令和4年4月19日 東京地裁判決
事件番号:令2(ワ)26313号・令3(ワ)11360号
事件名:賃料増額等請求本訴事件、賃料減額等請求反訴事件
文献番号:2022WLJPCA04198007
テナントへの値上げ通知で重要なこと
この事例をふまえると、テナントへの値上げ通知で重要なポイントとしては、次のような点が挙げられます。
- 値上げについて明確に意思表示する
- 適切な金額を設定する
- 値上げの根拠となる資料を集める
値上げについて明確に意思表示する
テナントへ値上げ通知をする際は、「ご検討ください」よりも「来月から〇円とします」といった明確な意思表示を行うことが重要だということです。関係が良好な場合でも、あいまいな表現では後でトラブルが生じる可能性があります。
曖昧なままでいると、争いになった時にオーナー側が不利になることもありますので、賃料改定を伝える際は、しっかりと明確な意思表示を行うことをお勧めします。
適切な金額を設定する
無理な値上げ幅を通知すると、賃借人に納得してもらえず、スムーズに値上げできないかもしれません。
そのため市場の賃料相場をチェックし、適切な金額を通知することが大切です。
なお、どのくらいの賃料が適切なのかは、不動産鑑定士に算出してもらうといいでしょう。不動産鑑定士に第三者の視点から客観的な賃料を算出してもらえば、値上げの説得力も増します。
値上げの根拠となる資料を集める
そもそも賃料の改定について、契約書に記載されていることも少なくありません。契約書に記載されることが多い、賃料改定の理由となりうるケースの代表例は、以下の4つです。
- 固定資産税の変化
- 地価の上昇
- その他の経済事情の変動
- 近隣の建物の賃料との比較
これらのケースに該当する場合、それぞれ資料を集めて、理由を提示することが大切です。
関連記事:家賃の値上げ交渉に必要な資料とは?集め方を不動産鑑定士が解説!
テナントへ値上げするときは不動産鑑定士にも相談!
賃料値上げを行う際には、明確な意思表示をすることが重要です。「ご検討ください」といった曖昧な表現を避け、正式な意思表示を行うようにしましょう。それによって、後々の法的なトラブルを避けることができます。
また、提示する改定賃料は、適切な水準であることが求められます。不動産鑑定士に依頼すると、説得力のある賃料を算出してもらえるため、ぜひ一度相談してみてください。当事務所でも、不動産オーナーからの相談を承っております。

