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譲渡承諾料。承諾する面積で損していませんか?
こんにちは、不動産鑑定士の三原です。今日のテーマは、「譲渡承諾料。承諾する面積で損していませんか?」です。
借地人が借地権を第三者へ譲渡(売却など)する場合、地主は名義変更の承諾の対価として、譲渡承諾料を受け取れます。
しかし、譲渡承諾料を算出する際に、借地の正確な面積を確認していないと、地主が損をしてしまうことがあるのです。
なぜ正確な面積の確認が重要なのか、今日はその理由を見ていきましょう。
借地の正確な面積を把握していなかった地主が損をした事例
借地の正確な面積を把握していなかった地主が損をした事例として、東京地裁の平成28年6月6日判決(平成27年ワ、15235号)を取り上げ、借地面積の違いに関する譲渡承諾料の有効性について説明します。
事案の概要
借地人が借地権を第三者に売却したいと申し出ました。
地主は借地権の譲渡承諾書を発行しましたが、譲渡承諾書には契約上の面積12坪と記載されていました。
しかし、実際に測量したところ、借地面積は15.5坪であったことが判明しました。
ここで問題となったのは、古い契約書では「契約上の面積」と「実際に使用している面積」が異なることが多く、今回は地主が譲渡承諾をしたのは「12坪」についてのみで、残りの3.5坪については、新たに承諾が必要だと主張した点です。
そして、地主は、譲渡承諾が無効であるとして、建物の収去明渡しを求めました。
裁判所の結論
しかし、裁判所は、地主の請求を棄却しました。(つまり、地主の主張には理由がないとして、地主の請求は認められませんでした。)
裁判所が示した理由は、借地面積12坪を前提とした譲渡承諾は有効であり、残りの3.5坪については承諾がなかったものの、すぐに収去義務を課すことはできないというものでした。
また、譲渡承諾書がFAXで送られていた点についても、原本が交付されていなくても承諾の意思として認めるべきだと判断しました。
譲渡承諾料を算出する際は正確な面積を確認すべき理由
実務上、譲渡承諾書が曖昧に交付されるケースが多く、譲渡承諾の有効性について問題が生じることがあります。
特に、口頭で承諾したり、借地権を正確に特定せずに承諾書を交付することがあるため、面積に関しても誤りが生じることがあります。
しかし面積が曖昧なまま譲渡を承諾すると、つまり借地面積を現実より少なく計算して、安価な譲渡承諾料を請求してしまうと、地主側が損をすることになります。
現在では、Googleマップの航空写真を使って、簡易的に土地の面積を計測できるので、こうした問題を避けるためにも、しっかりと面積を確認することが大切です。
なお、先ほど紹介した事案のように、裁判所が残りの3.5坪については「借地権の譲渡を承諾しなかった」と認定した場合、その分の譲渡承諾料を借地人に別途請求することになります。もし不正確な面積で譲渡承諾料を請求してしまったかもしれないと不安に感じる場合は、実際の面積と乖離がないか、早めに確認してみてください。
なお、譲渡承諾料はいくらが適正なのか、実際の借地面積はどのくらいなのかといった悩みは、不動産鑑定士に相談することも可能です。当事務所でも地主の皆様からのご相談を承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。