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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今回のテーマは「判例・勝手に家賃を半分にした賃借人の悲惨な末路」についてです。
今回は、東京地裁の令和4年1月19日(事件番号:令和2年(ワ)5707号)で示された、家賃減額の考え方に関する判例を解説します。賃貸借契約における重要なポイントを学べる内容ですので、ぜひ参考にしてください。
事案の概要
今回取り上げるのは、あるマンションの賃貸借契約に関する事例です。以下のような状況が発生しました。
- 1. 賃借人が、マンションの排水管の不具合を理由に、5年間にわたり勝手に家賃の50%を減額して支払っていた。
2. 家主がこれを「賃料未払い」として、賃貸借契約の解除を求め裁判を起こした。
裁判所の判断
結論として、裁判所は家主の主張を認め、賃借人に物件の明け渡しを命じました。
- その理由は以下の通りです:
• 排水管の不具合による賃料減額率は20%が妥当であると判断。
• 30%分については「賃料未払い」と見なされ、5年間にわたる未払いが契約上の信頼関係を破壊したと判断された。
• 結果として、賃貸借契約の解除が認められ、賃借人は立ち退きを命じられました。
この事例から学べること
この判例から、不動産鑑定士として以下の重要なポイントをお伝えします。
- 1. 賃料減額には合意が必要
民法611条には「賃借物が一部使用できなくなった場合、その使用・収益ができなくなった部分に応じて賃料を減額できる」と規定されています。しかし、賃料を減額するには、家主と賃借人との合意が必要です。今回のように賃借人が一方的に減額を決めるのは法的に認められません。
詳しく知りたい方は、国土交通省のガイドラインをご参照ください。 - 2. 過剰な要求はトラブルを招く
今回の賃借人は退去に際して1,000万円の立退料を要求しました。しかし、家主側がこれを拒否し、最終的には裁判に至り、賃借人は立退料を一切もらえずに契約解除される結果となりました。もし現実的な金額(例:100万円程度)の立退料を求めていれば、家主が早期解決に応じていた可能性もあります。
欲張りすぎると、かえって不利な結果を招くことがあると教えてくれる事例です。
まとめ
今回のテーマ「判例・勝手に家賃を半分にした賃借人の悲惨な末路」を通して、賃貸借契約における賃料減額のポイントやリスクについて学びました。
賃貸借契約では信頼関係が最も重要です。家主と賃借人の間で合意のない一方的な行動は、今回のようなトラブルを引き起こす可能性があります。適切なコミュニケーションと現実的な対応が大切です。
それでは、今日の話はここまで。最後までお読みいただき、ありがとうございました!