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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。今日のテーマは「譲渡承諾書の偽造と契約解除」です。今回は東京地裁の令和3年1月19日、事件番号令元年ワ18612号の「建物収去土地明渡等請求事件」を参考にし、譲渡承諾書の偽造があった場合の対応について学んでいきたいと思います。なお、地裁の判決内容はあくまで個別の事情や背景を踏まえたものですので、皆さんの不動産にそのまま当てはまるわけではないことをご理解ください。
事案の概要
まず、事案の概要です。少し複雑な内容ですが、簡潔に説明します。貸主がいて、借地人は法人A社です。A社は借地上に建物を建てて所有しており、借地権付きの建物を第三者に売却しようとしていました。本来、このようなケースでは地主の許可を得て売買の手続きを進めるのが一般的です。しかし、今回の事案では、借地人A社が地主の譲渡承諾書を偽造していたのです。地主は後にこの偽造を知り、信頼関係の破壊を理由に契約解除を求めました。
裁判所の判断
結論として、裁判所は貸主の主張を認め、契約解除を認めました。つまり、地主のもとに土地が戻ることとなったのです。
その理由について説明します。借地人A社は不動産会社でした。A社の主張によれば、当時の経営陣はすべて変わっており、偽造者を特定することはできないとのことです。とはいえ、本件売買契約は成立せず、土地の利用状況に変更はなかったとしています。しかし、裁判所は売買契約が成立しなかったため、借地人が第三者に土地を使用させたわけではないものの、譲渡承諾書の偽造行為は貸主として到底容認できるものではないと判断しました。総合的に見て、信頼関係は破壊されたと認められ、借地契約の解除が妥当であるとされました。
不動産鑑定士としての意見
最後に不動産鑑定士としての意見を述べます。今回のケースでは、借地人が譲渡承諾書を偽造したのは、第三者との売買契約をスムーズに進めるための策だったと考えられます。おそらく、偽造した譲渡承諾書を見せておいて、売買契約を成立させ、その後で正式に譲渡承諾を得るつもりだったのでしょう。このような行動は非常に信じがたいものですが、実際にはこうした事例も存在することを理解しておくと、いざという時に役立つかもしれません。
まとめ
以上が今回のテーマ「譲渡承諾書の偽造と契約解除」についての解説でした。それでは、また次回お会いしましょう。
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