立退き・契約解除について

借地権の立退料と限定価格

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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今日のテーマは「借地権の立退料と限定価格」について、お話ししたいと思います。

【本日の判例紹介】
今回取り上げるのは、令和2年9月8日東京地裁の「建物収去土地明渡請求事件」の判決です。本事例では、立退料の算定方法として「限定価格」の考え方が用いられた点が注目されます。
事件番号は「平成28年ワの13019号」です。

  • 事例概要:
    • 地主が借地人に立退きを求めた事例
    • 対象地は東京都豊島区に所在する可能性が高い土地

【限定価格の適用】
この判例では、立退料の算定根拠として、不動産鑑定の理論である「限定価格」が用いられました。通常、立退料は「正常価格」に基づいて算定されますが、ここでは「限定価格」が採用され、地主にとって不利な判決が下されたのです。

  • ポイント解説:正常価格と限定価格
    • 正常価格: 市場で通常成立する適正な価格
    • 限定価格: 正常価格を上回る価格。特定の買い手、ここでは地主に限定される価値が加味されます。地主が借地権を買い取ることで、更地になるメリットが評価されるためです。

【判決内容】
本判例では、地権付建物の正常価格を7,760万円と評価しました。そして、この正常価格に約37%増額した約**1億円を「限定価格」**として認定しています。
その上で、さらに時の経過や修正を加え、最終的な立退料を9,300万円と結論付けました。

  • 判決の背景:
    裁判所は、地主の自用目的よりも、借地人の居住権を強く評価しました。これは、地主にとって厳しい判断ともいえます。

【私の意見】
私の視点では、この判決には地主の心理的な背景が関係しているように思われます。
地主は、裁判所が提示する土地評価よりも、更地としての実勢価格を高く見積もっていた可能性があります。そのため、最終的に借地権が地主の手に戻ったことを良しとしたのではないでしょうか。
また、立退料の算定に「限定価格」を用いるケースは、不動産鑑定の実務においても非常に珍しいため、この事例は貴重な参考材料となります。

【まとめ】
以上、今日は「借地権の立退料と限定価格」というテーマでお話しました。
今回の事例は、不動産取引における「限定価格」の概念を学ぶうえで重要な判例です。地主と借地人の利益バランスをどう考えるべきか、今後も注目すべきテーマだと思います。

今日の話はここまで。それではまた次回お会いしましょう!

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