借地契約のトラブル・リスク対策

期待しすぎはダメ!賃料増額訴訟の実際

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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今日のテーマは、「期待しすぎはダメ!賃料増額訴訟の実際」についてお話したいと思います。

【はじめに】

土地の地代やアパート・ビルの家賃において、オーナーにとって賃料の値上げは非常にやっかいな問題です。

特に最近は目に見えて物価が上がっていますから、「賃料もそれに合わせて上げたい」という気持ちは理解できます。
では、皆さんが賃料を値上げする場合、どのくらいの増額を期待しますか?
1割?3割?それとも5割でしょうか?

今回は、そうした値上げの参考になるよう、最新の賃料増額訴訟の判決結果をまとめてみましたので、ぜひご覧ください。

【判決事例の説明】

こちらの図をご覧ください。

■ 最近の判例(賃料増額請求)東京地裁 令和3年判決

種別 直近合意時点 価格時点 現行月額賃料 原告請求額 判決月額賃料 値上がり率
家賃(居住用) H27年4月 R3年2月 30,000 55,000 55,000 183%
地代(居住用) H18年2月 H30年9月 61,100 211,000 70,000 115%
地代(居住用) H18年1月 H31年2月 60,000 207,400 71,700 120%
地代(居住用) H25年12月 H28年6月 83,750 198,907 109,900 131%
家賃(店舗兼住宅) H24年8月 H30年6月 130,000 346,448 156,000 120%
家賃(店舗) H24年7月 H30年8月 420,000 791,000 505,700 120%
家賃(店舗) H19年1月 H31年2月 550,000 674,000 674,000 123%

 

これは、東京地裁における令和3年の判決を一部抜粋してまとめたものです。

表の内容を左から順に説明します:

  1. 地代か家賃かの区別
  2. 直近合意時点
    • 最後に賃料が変更された時点を示します。
    • 家賃の場合は、初回契約時の賃料が基準になるケースもあります。

表をざっと見渡すと、10年以上賃料が変更されていない事例がほとんどです。

  1. 現行月額賃料、原告(オーナー)の請求額、判決で決まった月額賃料
    • これにより、判決による賃料の変化が一目で分かります。
  2. 判決による値上がり率(一番右の列)
    • ここが最も注目ポイントです!

【値上がり率の実際】

ざっくり言うと、裁判所に持ち込んでも値上がりは2割程度が多いという結果です。

たった2割と感じるか、2割も上がると感じるかは人それぞれですが、交渉事において「2割増」が一つの目安になると言えます。

なお、1番上の事例では、元々の賃料が月額3万円と低かったため、率にすると8割増となっていますが、これは少し特殊なケースです。

【判決の背景】

私の経験上、賃料増額訴訟の判決は、不動産鑑定士の鑑定結果が大きな影響を与えることが多いです。

賃料が高いか安いかという判断は、裁判官(法律家)には難しいためです。
ただし、賃料の変更は契約が継続している前提で行われます。

そのため、ポイントとしては、

  • 新規で貸した場合の「新規賃料」
  • 現行の賃料
    これらの間を取った「継続賃料」が判決として決まることになります。

結果として、賃料が一気に大きく上がることは少なく、まずは2割増が一つの基準と考えられます。

【アドバイス】

ただし、契約ごとに例外もあり、継続賃料は個別性が高い分、難しい部分があります。
疑問があれば、ぜひお近くの不動産鑑定士に相談されることをおすすめします。

【まとめ】

以上、今日のテーマは「期待しすぎはダメ!賃料増額訴訟の実際」でした。
裁判所における判決結果や増額交渉のポイントが参考になれば幸いです。

今日の話はここまで。それではまた次回お会いしましょう!

 

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