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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今日のテーマは「【保存版】店舗立退料の相場」についてお話したいと思います。
【イントロダクション】
古いビルやアパートを持つ地主や家主にとって、建物の建て替えを進める際にテナントに支払う立退料は、非常に頭を悩ませる問題です。
そこで今回は、特に「店舗」に焦点を当て、最新の立退料判例をいくつか調べてみました。
【飲食店事例】
まず、こちらの図をご覧ください。飲食店を中心とした4つの事例をご紹介します。
【最近判例まとめ(一部抜粋)】店舗 編
建物築年 | 借家期間 | 業種 | 月額家賃 | 借家人要求 | 立退料判決 | 立退料月割 |
40年程度 | 13年程度 | ラーメン屋(7席) | 15万円 | 2,000万円 | 1,556万円 | 104ヶ月 |
47年以上 | 20年程度 | 1F台湾料理 | 58万円 | 判決額以上 | 2,330万円 | 44ヶ月 |
44年程度 | 18年程度 | タイ料理店 | 55万円 | 8,624万円 | 3,000万円 | 55ヶ月 |
55年以上 | 40年程度 | とんかつ店 | 40万円 | 1億6,500万円 | 3,000万円 | 75ヶ月 |
ラーメン屋、台湾料理屋、タイ料理屋、とんかつ屋と並びますが、それぞれの立退料は月額家賃の50~100カ月程度。
例えば、小さな7席だけのカウンターラーメン店が月額家賃の100カ月分もの立退料判決が出ています。
この額からは、このお店が相当な人気店で利益を上げていたことが伺えます。また、借家期間が13年程度だったため、13年間の家賃収入を丸ごと返還するような形になっていますね。
一方、とんかつ店では借家人がなんと1億6,000万円もの立退料を要求しており、オーナー側からすると足元を見られている印象を受ける金額です。
【医療施設事例】
次に、歯科医院の立退料事例です。
【最近判例まとめ(一部抜粋)】店舗 編
建物築年 | 借家期間 | 業種 | 月額家賃 | 借家人要求 | 立退料判決 | 立退料月割 |
39年程度 | 30年程度 | 2F歯科医院
(70代) |
21万円 | - | 5,223万円 | 249ヶ月 |
この判例では月額家賃の249カ月分、つまり家賃20年分が立退料として支払われました。
高額判決の背景には以下の要因が挙げられます:
- • 新規移転時の医療設備費用が高額になる点
• 借家人である歯科医が高齢で、立退料が実質的に退職金のような役割を果たしてしまった点
これもオーナーにとって非常に厳しい金額となりました。
【注意点:立退料の正当性と「正当事由」】
最後に、立退料の裁判において注意すべき点をお話しします。
裁判における立退料は、あくまで建物所有者が立退きを求める「正当な理由」を補完するものです。
つまり、立退料だけでは正当な理由にならず、まずは「正当事由」を明確にする必要があります。
正当事由の判断は弁護士の専門分野ですが、不動産鑑定士としては立退料の妥当性を評価する立場から関わります。
疑問があれば、早めに弁護士に相談し対策を講じることをお勧めします。
【まとめ】
以上、今日のテーマは「【保存版】店舗立退料の相場」についてでした。
判例や裁判に関する知識は、建て替えを検討する際の非常に重要な参考資料になりますので、ぜひ参考にしてください。
今日の話はここまで。それではまた次回お会いしましょう!