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こんにちは、不動産鑑定士の三原です。今日は、「たった15万円の滞納でも裁判をする理由」についてご紹介します。最近、親族間で交わされた借地契約において、地代の滞納が理由で契約解除が認められた判例がありました。令和3年9月22日東京地裁の「建物収去土地明渡等請求事件」において、地主が勝ったケースです。
今回は、この事案をもとに、地代滞納がどのように法的な影響を及ぼすのかについて説明します。
1. 事案の概要
この借地契約は、昭和25年(1950年頃)に親族間で交わされたものです。現在では冠婚葬祭などの付き合いもほとんどなくなっているようですが、地代は月額1万円で、借地人は15万円の滞納をしていました。
具体的な経緯は以下の通りです。
日付 | 借地人の支払い状況 |
R2.4.20 | 15ヶ月分の滞納(15万円) |
R2.4.28 | 4月末までに全額支払うよう請求 |
R2.5.26 | 8万円支払い(残り8万円滞納) |
R2.6.1 | 残りの金額を7日以内に支払うよう請求 |
R2.6.15 | 支払いなし |
R2.7.7 | 5万円支払い(残り3万円滞納) |
R2.7.21 | 訴訟提起 |
R2.8.7 | 5万円支払い |
R2.9.28 | 3万円支払い(滞納解消) |
2. 裁判所の判断
裁判所は、借地契約の解除を認めました。つまり、15万円の滞納により、借地人は土地を明け渡さなければならないこととなりました。
契約解除を認めた理由は以下の2点です。
- ① 滞納期間とその後の対応
地代は月額1万円と低額であるにもかかわらず、15ヶ月間も滞納が続き、その解消に数ヶ月もかかっていることから、今後も滞納の可能性が高いと判断されたため。
② 地主の誠実な対応
地主は訴訟を提起する前に、連帯保証人を立てるよう求めたり、3ヶ月の滞納でも明け渡しを求めてもおかしくないと警告したり、定期借地権に切り替える提案をしたり、段階を踏んで厳しくも誠実に対応していました。裁判所はこのような地主の誠意を認めました。
3. 最後に個人的な見解
この判決のポイントは、地主が段階を踏んで厳しく対応したことだと思います。裁判所は、この誠意を認め、契約解除を許可したのです。
もし地主の立場で、月額1万円の地代に対して15万円の滞納で裁判を起こすのかと思われるかもしれません。訴訟費用の方が高くつくのではないか、と思う方もいるかもしれません。しかし、判例によると、この土地の借地権価格はおおよそ1,800万円とされています。つまり、訴訟によって立ち退き料を支払うことなく、その土地を無料で返してもらうことができたということです。立ち退き料として1,800万円ほど支払うことを考えると、訴訟費用は比較的安いものと言えるでしょう。
まとめ
この事案から学べることは、滞納があった場合でも、地主が誠実に対応し、段階を踏んで対応することの重要性です。また、金額が小さくても、滞納が長期間続くと、法的手段を講じる価値がある場合があることを示しています。
以上、今回は「たった15万円の滞納でも裁判する理由」についてお話ししました。参考になれば幸いです。では、今回はここまでです。