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こんにちは、不動産鑑定士の三原です。今回は「共有不動産のリスク」についてお話しします。相続で不動産を共有することは一般的に避けるべきだと言われていますが、その理由や実際のリスクについて詳しく説明する機会は少ないのではないでしょうか。
今日は、共有不動産に関するリスクを不動産業者が共有持分を買い取る事例を交えてご紹介します。特に、あまり親しくない親族間で不動産を共有している方は、ぜひご覧ください。
共有不動産とは?
まず、共有不動産とは、複数の所有者が共同で所有している土地や建物のことです。例えば、1億円の土地を兄弟二人が2分の1ずつ共有している場合、二人で売れば1億円ですが、片方だけが持ち分を売る場合、実際にはその半分の5000万円では売れません。なぜなら、共有持分には使い勝手の悪さが伴うからです。
事例で考えるリスク
では、この状況を前提に具体的なリスクを見ていきましょう。
- 不動産業者が共有持分を安く買い取る 例えば、不動産業者がこの共有持分を1000万円で買い取ることがあります。親族間で仲が悪く、現金が欲しい共有者が安く売却してしまうケースです。
- 買い取った不動産業者が他の共有者に高額で売却を求める 次に、不動産業者は他の共有者に対して、例えば5000万円で売却を求めてきます。もし、他の共有者が応じなければ、業者は裁判を起こして「共有物の解消」を求めることになります。共有物分割請求権を使って、共有状態を解消しようとするわけです。
- 自分の持ち分を売らなければならなくなる可能性 もし、他の共有者が買い取りに応じなければ、最終的には自分の持ち分を売らざるを得ない場合もあります。業者はその後、土地を1億円で売却すれば大きな利益を得ることができるのです。
具体例:実家を共有する兄弟のケース
例えば、相続で兄弟間で実家の土地建物を共有している場合を考えてみましょう。ここに、兄が住んでおり、弟が持ち分を不動産業者に売却したとします。この場合、以下の3つのケースが考えられます。
- 業者から権利を買い取る
兄が業者から弟の持ち分を買い取るケース。 - 退去して自分の権利を売る
兄が退去し、持ち分を業者に売るケース。 - 業者の持ち分に対して家賃を支払う
兄が業者に対して家賃を支払うケース。
このように、共有不動産には様々なリスクが伴い、トラブルの原因となることも少なくありません。
共有不動産のリスクとは?
このように、共有不動産は非常に扱いづらく、トラブルを引き起こす原因となります。実際に、相続で揉めた結果、長年にわたり共有状態が解消されないこともあります。さらに、親族間であればまだしも、外部の業者が絡むと、問題はさらに複雑化します。
例えば、共有者の一人が住んでいる場合、その共有不動産を売却することができないケースもあります。裁判所が、住んでいる共有者に対して「他の共有者に対して毎月賃料を支払え」と命じた事例もあります。このように、他人が共有者に入ることで、今後もトラブルが続くことになります。
また、業者が共有持分を買い取る際、どんな経緯で買い取ったのか、いくらで買ったのかを尋ねても、「名義はうちのものだから教えられない」と言われることがほとんどです。こうした事情から、共有不動産の問題はさらに厄介になることがあります。
早めの共有解消を考えよう
相続で不動産を共有している場合、特に親族間で問題がある場合は、早めに共有状態を解消することをお勧めします。タイミングも重要ですが、問題を先延ばしにすることで、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。