地主のための経営・資産管理術

不動産を用いた相続対策(2019年8月末東京地裁判決)

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こんにちは、日本橋鑑定総合事務所の不動産鑑定士、三原です。
今回は「不動産を用いた相続対策(2019年8月末東京地裁判決)」についてご説明します。

相続税の計算は、基本的には路線価に基づいて行われますが、この国が定めたルールを覆す判決が、2019年8月末に東京地裁から下されました。
本記事では、この判決をもとに以下の2点について解説いたします。

  1. 不動産による相続税対策がいかに有効であるか
  2. これを利用する際の注意点

路線価とは?

まず、路線価について簡単に説明します。
路線価は、国税庁が毎年公表している、土地の相続税計算のための基準です。土地を相続した場合、路線価をベースに税額が算出されます。

一般的に、路線価は時価よりも低く設定されています。これは、路線価が公的時価の約80%で設定されるためです。しかし、土地の個別性が強い場合(例えば、がけ地や高低差のある土地など)、路線価が時価より高く評価されることもあります。特に都市部では、土地取引が活発なため、実勢価格が路線価の2倍、3倍になることもあります。

このような路線価と実勢価格の違いを利用して、相続税を少なくする方法が存在します。

2019年8月末 東京地裁判決のケース

ここで、2019年8月末に東京地裁で下された判決のケースを紹介します。
相続税対策として、相続発生前に不動産を購入し、相続税評価を下げた事例です。

ケース概要

このケースでは、相続が発生する前に、東京都内のマンション(購入額8億3700万円)と、神奈川県内のマンション(購入額5億5000万円)の2つの不動産を購入しました。購入額の合計は13億8700万円です。
相続が発生すると、相続人は路線価を基に相続税を計算しました。その結果、2つのマンションの評価額は合計でなんと3億3000万円となりました。

つまり、購入額13億8700万円に対して、相続税評価額は3億3000万円にしかならず、差額は10億5700万円。この差額分が、相続税を大幅に減少させたのです。

現金との比較

この事例を現金で考えると、13億8700万円の現金をそのまま相続すると、当然評価額は13億8700万円となります。一方、不動産に変えると、その評価額が3億3000万円になるため、相続税評価額は大きく下がることがわかります。
このケースでは、評価額は購入額の約24%に過ぎないということです。これにより、相続税の負担を大幅に減らすことができました。

注意点:相続税対策を行う際の3つのポイント

この判例をもとに、相続税対策を行う際に気をつけるべきポイントを3つご紹介します。

  1. タイミング

まず最も重要なのは「タイミング」です。このケースでは、東京都内と神奈川県内のマンションを購入したのが2009年、その後相続が発生したのが2012年6月。さらに、2013年には神奈川県のマンションを売却しています。
相続前に不動産を購入し、その後すぐに売却して現金化するという「タイミングの良さ」が過剰に評価されました。

  1. 相続人の年齢

この事例の相続人は、相続発生時に94歳でした。収益目的を理由に不動産を購入したとしても、実際には相続税の負担を軽減するための手段として見られます。この点も注意が必要です。

  1. 不動産購入のための借入

また、このケースでは不動産購入に銀行借入を利用しており、その結果、相続税がゼロとなったことも問題視されています。過剰な相続税対策が行われていたため、この点もリスクとなり得ます。

結論

不動産を用いた相続税対策は、現金よりも評価が低くなる傾向があり、これまで非常に効果的な節税方法として広く利用されてきました。しかし、2019年8月末の東京地裁判決を受けて、今後はこの手法を用いる際により慎重な検討が必要です。
不動産を利用した相続税対策は引き続き有効ではありますが、タイミングや相続人の状況、借入の有無など、細かい点に注意して行う必要があります。

今回は「不動産を用いた相続対策」について解説しましたが、具体的な事例や個別のご相談があれば、ぜひご連絡ください。

お読みいただき、ありがとうございました。それでは、また次回の記事でお会いしましょう!

 

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