下記のブログは、こちらから音声でお聞きいただけます。
こんにちは。日本橋鑑定総合事務所の不動産鑑定士、三原です。
今回は、「地代の値上げに関して、人の好い地主はつくづく損する」というテーマでお話ししたいと思います。先日、ある地主さんと地代鑑定の話をしていて、改めて感じたことがあったので、皆さんにもその点をお伝えしたいと思います。
地代の値上げは地主から声をかけるべき
地代の値上げですが、実は地主から声をかけていかないと、なかなか上がりません。借地人の方から「そろそろ値上げしてもよいでしょうか?」という話が来ることはほとんどありません。例えば、月2万円の地代があった場合、これを1割や2割値上げしたいと考えたとしましょう。値上げ分は、1割なら2000円、2割なら4000円にすぎません。この程度の金額で、専門家に相談したいと思っても、どこに相談すればよいのでしょうか?
不動産屋さんや弁護士さんに相談しても、こうした小さな金額の地代値上げに対して真剣に相談に乗ってくれることは少ないと思います。確かに、他の事案でお世話になっている方に世間話のついでに聞くことはできるかもしれませんが、なかなか本格的に相談できるわけではありません。結果的に、地代の問題は放置されてしまい、長年値上げされずに続いてしまうことが多いのです。
地代の値上げを放置すると借地権の価値が高まる
地代が低いまま放置されると、どうなるかというと、借地権の価値が高まります。少し難しい言葉ですが、「賃料差額」という概念があります。賃料差額とは、適正な地代と現行地代の差のことです。この差が大きければ大きいほど、借地権の価格は高くなります。
例えば、地代が安く、優しい地主から借りている土地の借地権は、借地人にとって非常に魅力的です。借地権の購入希望者が多くなるため、借地権の価格が上がるのです。すると、底地(地主が所有する土地)の資産価値は下がることになります。結局のところ、人の好い地主は損をしてしまうのです。
地代値上げに積極的な地主は借地権価格を抑える
逆に、地代の値上げを積極的に行う地主がいた場合、過去に内容証明郵便や調停、裁判などの経験がある借地権では、購入希望者は高い金額を出して購入しようとは思わないでしょう。結果として、借地権の価格は下がり、借地人が売却先を見つけるのが難しくなります。
このように、底地の資産価値を守るためにも、地主さんは地代問題に目を背けることはできません。
地代値上げのメリット
地主の立場としては、目先のわずかな値上げ額だけを見て判断するのではなく、地代交渉の結果としてわずかな値上げであっても、底地の資産価値を高めることができるというメリットがあります。地代値上げに際しては、こうした長期的な視点を持ち、冷静に判断することが大切です。
今回は「人の好い地主はつくづく損する」というテーマでお話ししました。地代問題は、目先の金額だけでなく、長期的な資産価値にも影響を与える重要な問題です。地主さんが地代値上げに積極的になることで、底地の価値を守り、より良い資産運用が可能になります。
以上、今日の話はここまでです。ご覧いただきありがとうございました。