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こんにちは、日本橋鑑定総合事務所の不動産鑑定士、三原です。今回は、「何故3つの鑑定書が出るのか?裁判における不動産鑑定士の役割と実際」についてお話しします。
裁判における不動産鑑定士の役割
賃料の値上げや値下げなどで貸主と借主の間に争いが生じ、裁判所を介して話し合う場面では、しばしば3つの鑑定書が提出されることがあります。これは、裁判や調停において重要な役割を果たす不動産鑑定士の立場を反映した結果です。今日は、この不動産鑑定士の役割と、裁判における実際の流れについて説明します。
不動産鑑定士は中立的な立場で鑑定を行う
まず、裁判での不動産鑑定士の役割について説明します。一般的にはあまり知られていないことですが、不動産鑑定士は、鑑定評価を行う際には公正かつ誠実に行うことが求められています。つまり、貸主や借主のいずれか一方に偏った鑑定結果を出すことはできません。
依頼者の中には、自分に有利な結果を導くようプレッシャーをかけてくることがありますが、不動産鑑定士はそのようなプレッシャーに屈することなく、常に中立的な立場で鑑定を行わなければなりません。この点は、弁護士との大きな違いです。弁護士は依頼者側に立って利益を守るのが仕事ですが、不動産鑑定士は両者の立場に配慮し、中立的に鑑定書を作成します。
実際の裁判ではどのような鑑定書が提出されるのか?
とはいえ、実際の裁判では、必ずしも完全に中立的な立場を保つのは難しい場合もあります。例えば、貸主側から提出される鑑定書は賃料の値上げを示し、借主側から提出される鑑定書は値下げを示すことが多いです。このように、依頼者の立場によって鑑定書の内容に偏りが生じることがあります。
その一因として、資料や情報が不足していることが挙げられます。もし、貸主と借主双方から同時に依頼を受け、両者から十分な情報を提供してもらえれば、より中立的な鑑定書が作成できるはずですが、実際にはどちらか一方からしか情報が提供されない場合が多いため、どうしてもその側に寄った鑑定結果となることがあります。
裁判では3つの鑑定書が提出される理由
そのため、裁判においては通常、3つの鑑定書が提出されることになります。
- 貸主側から提出される鑑定書
- 借主側から提出される鑑定書
- 裁判所が依頼した中立的な鑑定書(裁判所側の不動産鑑定士が作成)
この3つの鑑定書が提出され、双方の主張や鑑定結果をもとに議論が交わされます。最終的には、裁判所が最も妥当と判断する鑑定書を採用することになります。
まとめ
不動産鑑定士は、裁判において中立的な立場で鑑定を行うことが求められますが、実際の場面では情報不足や依頼者側の影響により、鑑定結果が一方に偏ることもあります。そのため、裁判で提出される鑑定書は通常3つのものがあり、裁判所側の鑑定書が最終的に採用されることが多いです。
以上、今回は「何故3つの鑑定書が出るのか?裁判における不動産鑑定士の役割と実際」について説明しました。今日の話はここまでです。