下記のブログは、こちらから音声でお聞きいただけます。
こんにちは、不動産鑑定士の三原です。 今日は「店舗立退き。通知から3年必要?」というテーマでお話ししたいと思います。
今回は、古いビルの建て替えに伴う店舗立退きについて、裁判になった場合、どれくらいの期間を見込んでおけば良いか、最近の東京地裁の判例を基に解説します。ですが、この判例は一例に過ぎませんので、争う内容や具体的な事案によって異なることをご留意ください。
店舗立退きに必要な期間
立退きに関する問題では、オーナーとテナントとの間で争いが生じることが多いです。借地借家法では、契約の更新を拒絶する通知は契約満了の6ヵ月前から1年以内に行う必要があります。しかし、立退きで揉め、裁判になると、3年程度かかることもあるので、計画的に進める必要があります。
店舗立退きまでに2年9か月を要した事例
最近、築50年の耐震性に問題があるビルで、月額22万円で飲食店舗として貸しているテナントに対し、オーナーが建物明渡しを求めた事例がありました。立退き料がいくらかも気になるところですが、それと同じくらい重要なのは、立退きの判決が出るまでの期間です。
関連記事:【貸主向け】店舗の立退料は月額賃料の何か月分が相場?裁判例に沿って解説!
関連記事:店舗立退料はいくらが相場?飲食店と歯科医院の事例を紹介!
このケースでは、オーナーが更新拒絶の通知を行ったものの、テナント側がそれを拒否し続けた結果、裁判で判決が出るまで2年9ヶ月かかりました。更新拒絶の通知とは、オーナーが契約期間満了後も賃貸を続けない旨を告げるものです。
さらに立退き料は1640万円(月額家賃の75ヶ月分)であり、オーナーにとっては高額な金額です。このように、立退きにはかなりの期間を要することがあるため、オーナーとしては慎重に計画を立てる必要があります。
参考判例
- 裁判年月日:令和4年7月20日
- 裁判所名:東京地裁
- 裁判区分:判決
- 事件番号:令2(ワ)12971号
- 事件名:建物明渡請求事件
- 文献番号:2022WLJPCA07208010
店舗立退きのためには長期的なプランが必要
立退きが長期化することで、オーナーの建て替え計画がずれ込むことになります。この事例のように、立退きに約3年かかることを想定しておく必要があります。テナントは法的に強い立場にあるため、立ち退きを行う場合には、前倒しで計画を進めることが大切です。また、早期に話をまとめるために、立退き料を提供するなどの対策も考慮する必要があります。
また、もしテナントとの交渉が難航しそうな場合は、早めに裁判にかけることも有効な手段です。裁判で判決を得るには時間がかかるため、長期的な視点でプランを立てることが重要です。
関連記事:テナントを退去させたい!店舗立退きでオーナー(貸主)が勝つための3つのポイント
今回の判例ではオーナーにとって比較的有利な内容ではありましたが、それでも数年の時間がかかることを考慮し、立退きの際には長期的なスケジュールを立てることが必要です。できるだけ短期間で立退きを進めたい場合は、早めに裁判を起こすことも検討しましょう。
今後、アパートや事務所など、他の用途についても別の動画で解説する予定ですので、興味のある方はぜひ、当事務所が運営する「地主の駆け込み寺ch」にもご注目ください。
また、個別の事例ごとの立退料・立退き期間について相談したい方は、ぜひ当事務所へお問い合わせください。