立退き・契約解除について

迷惑な住人は追い出せる?27万円の立退料で退去が認められた事例を解説!

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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今日のテーマは、「迷惑な住人を立退料たった27万円で追い出した判例」についてです。

オーナーの立場として、迷惑な住人を追い出したいということもあるでしょう。しかし立退きは簡単に認められるものではありません。

それがたった27万円で退去させられた理由について、詳しく紹介します。

迷惑な住人の立退きが認められた判例

今回取り上げるのは、東京地裁の令和3年12月14日(事件番号:令和3年(ワ)6631号)の判例で、築古アパートの賃借人退去に関する事例です。賃貸経営に携わる方にとって、参考になるポイントが詰まっていますので、ぜひ最後までご覧ください。

物件概要

  • 場所:東京都豊島区
  • 建物:築50年の木造2階建てアパート(総戸数4室)
  • 問題の賃借人:70歳を超えた男性(以下「迷惑おじさん」)

これといって特別なアパートではなく、ごく一般的な賃貸物件だといえます。

賃借人の問題行動

この賃借人は約30年間、月4万5千円の家賃でアパートの2階に住んでいました。しかし、以下のような問題行動を繰り返していました:

  • 下の階の居住者が帰宅すると、わざと大きな足音を立てる。
  • クレームを言った相手の胸ぐらを掴むなど、他の居住者とトラブルを起こす。

その結果、1階の住人が退去し、その後に入居した新しい住人も次々に退去していきました。

この迷惑おじさん以外は誰も住めない状態となり、アパート全体の空室率が100%に近い状況に。

困った大家さんは、「建物の建て替え」を理由に、賃借人に建物明け渡しを求める裁判を起こしました。

裁判所の判断

裁判所の結論は以下の通りです。

立退料27万円(家賃半年分)を支払うことを条件に、建物の明け渡しを認めた。

裁判所は次の点を重視しました。

  1. 賃借人の一連の行いを踏まえた上で、賃借人の居住権よりも、大家の建て替え事由の方が正当性が高いと判断。
  2. 賃借人が過去の居住者とのトラブルを主体的に引き起こした事実については、証言が不足しており、明確に認められなかった。

また、裁判所は賃借人の発言内容から、その性格についても癖が強いことを推測しています。

「50年以上にわたり国権の暴圧を受け続けているところ、大家は国家に加担して明け渡しを求めている」という発言はその一例です。

迷惑住人の立退き実現のために重要なポイント

この判例から、不動産オーナーや大家が学ぶべきポイントをまとめます。

  • 迷惑行為の証拠収集
  • 立退料
  • 長期入居者への対応は慎重に

1. 迷惑行為の証拠収集

今回、迷惑おじさんが他の住人に迷惑をかけていた証拠が十分でなかったため、裁判所は「建て替え理由」を正当事由とする判断に留まりました。

隣人トラブルを理由に退去を求める場合は、被害者や周囲の証言、証拠の収集が重要です。

2. 立退料

今回のケースでは、迷惑行為を繰り返した賃借人であっても、裁判所は立退料27万円の支払いを条件としました。

立退きにおいては、大家側が一定の補償を支払うことが避けられない場合が多いです。

3. 長期入居者への対応は慎重に

長年住み続けた賃借人の退去を求める際には、法的な手続きや正当事由を慎重に検討する必要があります。

今回のように建て替えを理由にすることで、退去が認められる可能性が高くなることもあります。

立退きを実現させるためには事前の準備が不可欠

今回のテーマ「迷惑な住人を立退料たった27万円で追い出した判例」について解説しました。

賃貸経営では、長期入居者の問題行動に悩まされることもありますが、今回の事例は建て替えを正当事由とすることで解決に至ったケースです。不動産オーナーの皆さんは、正当事由の整理や証拠の収集を怠らず、慎重に対応することが重要です。

立退きを実現させるためには事前の準備が不可欠ですから、もし保有物件・土地の立退きに悩んでいる場合は、ぜひ当事務所にご相談ください。不動産鑑定士の立場から、どのような立退き戦略が必要かお話いたします。

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