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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
地主の皆さんは、「借地権の立退料」と「限定価格」に関係があることをご存知でしょうか。
今回は非常にめずらしい裁判例を基に、借地権の立退料と限定価格の関係性を紹介します。
借地立退料とは
借地立退料とは、借地人に土地を返してもらいたい場合に支払う金銭的な対価のことです。
そもそも土地を貸している場合、土地自体は地主さんのものとはいえ、その利用権は借地人が持っています。
そして日本には「借地借家法」という法律があり、賃借人の居住権が強く保護されているため、簡単には借地契約を解消できません。
このような場合に、どうしても借地契約を解除したい場合、立退料を払って引っ越してもらうことがあります。
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限定価格とは
市場で通常成立する適正な価格のことを、「正常価格」といいます。
それに対して、不動産鑑定評価において、特定の当事者間でのみ成立する価値を反映した価格のことを「限定価格」といいます。
限定価格は、隣接地との併合や、借地人が底地を買い取るケースで考慮されます。
たとえば借地人が底地を買い取れば、更地として自由に土地を使えるようになるわけですから、大きなメリットがあるといえるでしょう。そのため「正常価格」よりも、借地人に限定される価値が加味された「限定価格」のほうが高くなるのです。
立退料の算定方法に「限定価格」が用いられることがある
通常、立退料は「正常価格」に基づいて算定されます。
しかし、立退料の算定根拠に「限定価格」が用いられた裁判例もあるため、参考として紹介します。
今回取り上げるのは、令和2年9月8日東京地裁の「建物収去土地明渡請求事件」の判決です。事件番号は「平成28年ワの13019号」です。
【事例概要】
- 地主が借地人に立退きを求めた事例
- 対象地は東京都豊島区に所在する可能性が高い土地
【判決内容】
本判例では、借地権付建物の正常価格を7,760万円と評価しました。
そして、この正常価格に約37%増額した約1億円を「限定価格」として認定しています。
その上で、さらに時の経過や修正を加え、最終的な立退料を9,300万円と結論付けました。
この判例では、立退料の算定根拠として、不動産鑑定の理論である「限定価格」が用いられています。
限定価格のほうが高いわけですから、立退料も高くなり、地主にとって不利な判決であったといえます。
【判決の背景】
裁判所は、地主の自用目的よりも、借地人の居住権を強く評価しました。これは、地主にとって厳しい判断ともいえます。
立退料を巡る交渉では「限定価格」の存在も考慮する
立退料は通常、「正常価格」に基づいて算定されるとはいえ、「限定価格」によって算定された裁判例もあることは、地主として知っておくべき情報でしょう。(立退料の算定に「限定価格」を用いるケースは、不動産鑑定の実務においても非常に珍しいため、この事例は貴重な参考材料です)
不動産鑑定士の私の視点では、この判決には地主の心理的な背景が関係しているように思われます。
地主は、裁判所が提示する土地評価よりも、更地としての実勢価格を高く見積もっていた可能性があります。そのため、最終的に借地権が地主の手に戻ったことを良しとしたのではないでしょうか。
なお、もし取り返したい土地があり、立退料がどのくらいになるのかシミュレーションしたいという場合は、ぜひ一度不動産鑑定士にも相談してみてください。
当事務所でも地主の皆様からのご相談を承っております。

