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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今日のテーマは、「自動販売機の設置と契約解除」についてです。今回は、平成30年3月22日東京地裁の「建物収去土地明渡等請求事件」の判決を取り上げ、その内容を説明したいと思います。なお、この事案は、もともと地代滞納による無催告解除の効力の検討の中でなされた議論であり、直接的に自動販売機の設置を理由に契約解除を求めたケースではないことをご留意ください。
1.問題提起
事案の概要から説明します。借地人が地主に無断で借地上に自動販売機を設置しており、そのため、借地権の無断転貸に該当するとして、土地賃貸借契約の解除を求めています。民法612条では、借地権の無断譲渡や転貸を禁止しており、同条第2項において、その違反があった場合に契約解除が可能であると定めています。
2.地主の主張
地主の主張は以下の通りです。借地人は本件土地の一部を無断で第三者に転貸し、その場所に自動販売機を設置させているとしています。地主はこの行為に黙示的に承諾したことはないため、無断転貸に該当すると主張しています。
3.借地人の主張
借地人は、自動販売機が設置されていることは認めつつも、設置面積は0.85平方メートルと小さく、設置によって得られた金額は5年間で20万円、月額約3,333円に過ぎないと説明します。この金額は電気代程度であり、営利性がないため、無断転貸とは認められないと主張しています。また、自動販売機は約5年前に設置され、地主はその存在を認識していたにも関わらず、これまで無断転貸を理由に契約解除を主張してこなかったため、黙示的に承諾があったと考えるべきだと述べています。
4.裁判所の見解
裁判所は、自動販売機の設置について、本件契約における信頼関係を損なう可能性があることを認めつつも、設置が外部から確認できることを指摘しています。地主はその存在に気づいていたにもかかわらず、これまで何も言わなかったため、契約解除を主張するのは遅すぎると判断しました。
5.個人的な見解
私個人としては、この判例における裁判所の見解が重要だと感じています。裁判所が「自動販売機の設置について、本件契約における信頼関係を損なうものとしてみる余地がある」と示した点は、今後の契約解除に関連する事案において重要な指針となるでしょう。したがって、このような状況に遭遇した場合、契約解除に至らなくても、地主は無断転貸を理由に書面で撤去を求めるなど、早めに対処しておくことが有利に働くことが多いと考えます。場合によっては、賃料の値上げ交渉材料としても活用できるでしょう。
以上、今回のテーマ「自動販売機の設置と契約解除」についてでした。最後までお読みいただき、ありがとうございました。