地主のための経営・資産管理術

共有物分割評価で見落とされがちなモノ

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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。今日のテーマは、「共有物分割評価で見落とされがちなモノ」です。

今回は、東京地裁の平成31年4月26日事件(平成28年ワ36895号)から「共有物分割請求事件」を参考に、使用貸借の評価について学びたいと思います。まず、共有物とは、1つの不動産を複数人で所有している状態を指します。そして、今回の判決の内容はあくまで個別の事情を踏まえたものですので、皆さんの不動産にそのまま当てはまるわけではない点をご注意ください。

事案の概要

本件では、Aさんが単独所有する土地の上に建物が建っています。建物の名義は、Aさんが9分の4、Bさんが9分の5を共有している状況です。Aさんは、Bさんの建物の共有物持分9分の5を買い取ることで、共有を解消することを求めました。Bさんは金額次第では売却してもよいと考えましたが、問題は土地利用権の評価でした。

多くの方が「建物の価格だけを評価すればいいのでは?」と思うかもしれませんが、実際には、建物だけでなく土地利用権の評価が必要な場合もあります。このケースでも、Bさんが指摘した通り、土地利用権の評価が重要となったのです。

使用貸借とは?

土地利用権の評価を説明する前に、「使用貸借」について触れます。使用貸借とは、賃料が発生せず、仮にあったとしてもごく少額(例えば、固定資産税程度)で土地を貸し借りしている状態のことです。このケースでは、AさんとBさんの間には借地契約がなく、単なる使用貸借でした。

使用貸借権の評価

さて、実際の評価はどうだったのでしょうか?裁判所は使用貸借権の評価額を考慮しました。使用貸借権は、第三者に譲渡できないなど非常に弱い権利ですが、建物から賃料収入を得られるため、土地の利用権として一定の価値があると判断されました。

このケースでは、使用貸借権の評価について、東京地裁の競売評価実務を参考に、敷地価格の10%程度を基に算定されました。

不動産鑑定士としての意見

今回の事例では、建物を買い取る際に土地部分の利用権の評価が重要なポイントとなりましたが、すべてのケースで使用貸借権の評価が必要になるわけではありません。つまり、ケースバイケースで評価方法が異なることを理解しておくことが大切です。

まとめ

今回のテーマは「共有物分割評価で見落とされがちなモノ」でした。特に、土地利用権や使用貸借の評価が意外に見落とされがちですが、実際には重要な要素となることがあります。今後、共有物分割を行う際には、土地利用権や使用貸借権の評価もきちんと検討していくことが求められます。

それでは、今日の話はここまで。次回もお楽しみに!

 

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