立退き・契約解除について

判例研究!地代滞納と更新料の関係

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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
今日のテーマは、「地代滞納と更新料」についてです。今回は、平成30年3月22日東京地裁の「建物収去土地明渡等請求事件」の判決を基に、地代滞納と更新料の関係について説明したいと思います。

1.問題提起
事案の概要を説明します。借地人が地代を滞納したため、地主から契約解除を告げられました。しかし、借地人は、過去に支払った更新料が賃料の一部であると主張し、多少の地代滞納を理由に契約解除されることは不当だと考えています。すなわち、更新料は地代の一部であるのか、という点が争点となりました。

2.地主の主張
地主は、借地人が更新料を支払ったことを理由に、地代の不払いを許容することはできないと主張しています。更新料の支払いは、賃料の未払いを正当化するものではないと強調しています。

3.借地人の主張
借地人は、過去に約418万円の更新料を支払ったことを認めつつ、この金額が前賃借人であった母親が昭和53年に支払った額の約2.4倍であり、非常に高額であるため、賃料の支払い遅延によって契約の信頼関係が破壊されたとは言えないと主張します。

4.裁判所の見解
裁判所は、借地人が支払った更新料が仮に賃料の補充や前払金であるとしても、地代滞納を正当化するものではないと判断しました。また、契約締結から解除までに約18年8ヶ月が経過しており、この事実が契約解除を制限する材料として考慮される余地があるとしても、最終的には解除に至る理由としては不十分であるという見解を示しました。さらに、更新料の金額が昭和53年に支払った額の約2.4倍であったとしても、地価の上昇が予想されるため、その金額の大きさ自体には問題はないとの判断です。

5.不動産鑑定士の視点
不動産鑑定士としては、更新料について二つの考え方があることを認識しています。一つは、更新料が賃料の一部であるとする立場です。もう一つは、更新料を賃料ではなく、地主との争いを封じるための解決金であるとする立場です。
本判決では、基本的に更新料は地代の一部とは言えないとの立場を取っていますが、仮に更新料を受け取った後にすぐに滞納があった場合、この判決のように、更新料を賃料の一部として扱い、契約解除を簡単に認めない可能性も考えられます。そのため、地代滞納が予想される借地人との契約では、更新のタイミングでの更新料の受け取り方に注意を払うことが重要だと考えます。

以上、今日のテーマは「地代滞納と更新料」についてでした。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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