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こんにちは、不動産鑑定士の三原です。今日は「地代滞納で即時解除が認められた事案」についてご紹介します。
地代滞納でお困りの地主の方は意外と多いのではないでしょうか。地代の支払いが遅れがちな借地人に対して、契約解除を検討することもあるかと思います。しかし、借地人は「借地借家法」によって手厚く保護されており、簡単に契約解除ができるわけではありません。そこで今回は、最近の判例を取り上げ、地主が地代滞納を理由に即時解除を認められた事案を解説します。
1.事案の概要
まず、どのような事案だったのかを説明します。このケースでは、借地人が歯医者の二代目で、母親から本借地権を相続した人物でした。しかし、借地人は地代滞納を繰り返す常習犯でした。月額の地代はわずか2万9千円であり、支払い遅延が常態化していたのです。
たとえば、以下のような滞納状況が続いていました。
• 平成25年6~7月分 → 翌年8月に支払い
• 平成25年8~10月分 → 翌年12月に支払い
• 平成25年11~12月分 → 平成27年1月に支払い
• 平成26年1~12月分 → 平成27年10月に一括支払い
このように、地代が半年から1年遅れてまとめて支払われることが度々ありました。
2.地主の対応
地主は、地代の支払いが遅れるたびに口頭で催促し、支払われた際には「次回からは遅れないように」と注意をしていましたが、内容証明などの法的手続きを取っているわけではありませんでした。しっかりと支払い記録を管理し、証拠を押さえていたことが、この後の判決で重要な要素となりました。
3.無催告解除の実施
このような状況の中、地主は「無催告解除」を選択しました。無催告解除とは、予告なしに契約を解除することを意味します。通常、契約書には「3か月以上の賃料未払いがあった場合、催告を経て契約解除できる」といった条項が含まれていますが、この事案では、地主は催告を行わず、いきなり解除の意思表示をしました。
借地人は、突然の契約解除に驚き、「催告を受けていないので解除は無効だ」と反論しましたが、裁判所は地主の主張を認めました。
4.裁判所の判断
裁判所は、地主の「無催告解除」が有効であると判断しました。これにより、立退料も支払う必要がなく、地主は土地を明け渡させることができました。借地人は、その後、滞納分を支払い、裁判中も賃料相当額をきちんと支払いましたが、契約解除は有効とされました。
5.個人的な見解
私の見解としては、この借地人は完全に地主を舐めていたと言えます。歯医者を経営しながら、月額2.9万円の地代すら支払えないのは考えにくいです。実際、借地人は診療所の収入減少や教育費用を言い訳にしましたが、長年にわたり地主の優しさにつけ込んでいたと考えられます。
また、地主が内容証明を送らずに、あえて「無催告解除」を選択した点が成功の要因だと思います。通常、内容証明を送ると、借地人は訴訟を恐れて支払いをすることもありますが、地主はそれを避け、一発で契約解除を実現しました。
6.まとめ
この事案から学べるのは、地代滞納が続く借地人に対して、無催告解除の戦略も有効であるという点です。地主が繰り返し口頭で注意をし、油断させた後、一発で解除することで、最終的に契約解除と土地明け渡しを実現しました。
地代滞納者に対して、内容証明などを使う前に、一度、このような戦略を検討してみても良いかもしれません。