借地契約のトラブル・リスク対策

使用貸借か賃貸借かを争った判例の紹介

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こんにちは、不動産鑑定士の三原です。今日は、「使用貸借か賃貸借かを争った判例の紹介」というテーマでお話しします。

最近、ある地主さんから相談を受けました。相談内容は、「土地を他人に貸しているが、契約書もなく、更新料もなく、土地の使用貸借か賃貸借の見分けがつかない」というものでした。今回はこの点について、判例を交えて解説します。

まず、使用貸借契約とは、簡単に言うと「ただで貸す契約」のことです。無料でも、固定資産税相当額を借り主側から受け取ることはできますが、借地借家法は一切適用されません。これは、地主が土地を返してもらうことをいつでも要求できるという意味です。地主にとって、使用貸借契約であるか賃貸借契約であるかは非常に重要です。

さて、令和元年8月6日の東京地裁の判例に基づき、使用貸借か賃貸借かを見分ける基準について説明します。争われたポイントは5つです。

  1. 使用料の名目
    受け取っている金額が「地代」や「借地料」といった名目であれば、賃貸借契約として認識されていると判断されます。
  2. 特別な関係
    使用貸借では、通常、親子や兄弟など特別な関係があることが多いです。本件ではそのような関係が証明されていなかったため、使用貸借ではないと判断されました。
  3. 固定資産税の金額
    固定資産税相当額の金額だけを受け取っていても、それが賃貸借契約である場合の賃料額に基づいているなら、単に固定資産税相当額だけで使用貸借とは言えません。
  4. 更新料などの有無
    更新料がないことを理由に使用貸借契約だと主張しても、裁判所は、更新料がない借地契約もあり得ると判断しました。
  5. 借地契約書の有無
    借地契約書が存在しないことを理由に使用貸借だと主張しても、裁判所は、契約が書面でなくても成立する可能性があると判断しました。

この判例では最終的に、使用貸借契約は認められませんでした。

このように、使用貸借契約と賃貸借契約の違いは、単なる金銭の授受だけでなく、契約の背景や内容に基づいて判断されます。契約を結ぶ際には、どちらの契約形態に該当するかをしっかり確認しておくことが重要です。

以上が「使用貸借か賃貸借かを争った判例の紹介」でした。興味のある方は、ぜひこの判例をご確認ください。

 

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