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皆さん、こんにちは。不動産鑑定士の三原です。
不動産オーナーとしては、賃料が滞った場合、明け渡しが可能なのかどうか、気になるでしょう。
そこで今回は、コロナ禍を理由に賃料を滞納した賃借人に対し、裁判所が明け渡しを認めた東京地裁の令和4年の判例をもとに、不動産オーナーが知っておくべき内容を解説します。
まず最初にお断りしておきますが、今回の判例は下級審でのものであり、事例ごとに前提条件が異なるため、結論が必ずしも一般化できるわけではありません。この点をご承知おきください。
賃料の滞納を理由に明け渡しが認められた2つの事例
それでは、賃料の滞納を理由に明け渡しが認められた事例を2つ紹介します。
1つはコロナ以前から滞納が繰り返されていた事例、もう1つはコロナ禍の真っただ中に新たに契約したテナントが滞納した事例です。
コロナ以前から滞納が繰り返されていた事例
賃借人は平成24年から、月額約15万円の賃料で物件を借りていました。しかし、平成29年頃から賃料の支払いが遅れることがあり、やがてコロナ禍に突入。賃借人はアパレル業界で働いており、コロナによる不景気で収入が減少し、副業を始めるなどして、滞納していた約100万円の賃料の半分ほどを返済していました。少しずつ支払ってはいたものの、全額の支払いは完了していませんでした。
皆さんもご存じの通り、この時期、政府は感染拡大を受けて、賃料の減額や支払い猶予をオーナーに推奨していました。
しかし、今回の裁判での結論はどうなったのでしょうか?
裁判所は賃料滞納による契約解除を認め、オーナー側が勝訴しました。その理由として、賃借人がコロナ禍による経済的困難を訴えていたものの、賃料滞納はコロナ以前から繰り返されていたため、コロナ禍だけが滞納の原因ではないと判断されました。つまり、問題はコロナ禍以前から発生していたという点が重要視されたのです。
令和4年6月8日、東京地裁、判決 令3(ワ)30637号 建物明渡等請求事件
コロナ禍の真っただ中に新たに契約したテナントが滞納した事例
令和3年のコロナ禍において、オーナーは月額16万円で1階の店舗部分をテナントに貸し出しました。しかし、このテナントは入居後すぐに賃料を滞納し、その主な理由として「新型コロナウイルスの感染拡大の影響」を挙げました。また、修繕の依頼をしても対応してもらえないことを理由に賃料を支払わないという典型的な主張も行いました。
さて、裁判所の判断ですが、オーナーの主張である「契約解除」と「明け渡し」を認めました。その理由は、新型コロナウイルスによる社会的影響がすでに契約時点で明らかであったため、コロナ禍を理由に賃料不払いを正当化することはできない、というものです。
参考:令和4年9月30日、東京地裁、判決 令4(ワ)7550号(2) 建物明渡等請求事件
賃料滞納に備え不動産オーナーが意識すべきこと
最後に、オーナーの皆さんへ、不動産鑑定士の視点からアドバイスです。
- 滞納が発生したら速やかに連絡する
- テナント審査は慎重に行う
滞納が発生したら速やかに連絡する
賃料の滞納は比較的よくあることですが、オーナーの方は滞納が発生した場合、1日でも遅れた時点で速やかに連絡を取ることが大切です。「1日くらいなら大丈夫だろう」と思われがちですが、これが賃借人に「少し遅れても問題ない」という印象を与え、徐々に遅延がエスカレートしていくことがあります。
今回の事例では契約解除が認められましたが、毎回簡単に解除が認められるわけではありません。さらに、裁判で勝訴したとしても、賃借人がすぐに退去するとは限りません。そのため、普段から賃料滞納に目を光らせ、早めの対策を取ることが重要です。
テナント審査は慎重に行う
多くのオーナーが空室の悩みを抱えているかと思いますが、今回紹介した例のように、入居後すぐに賃料を滞納するテナントも存在します。
もしそのようなテナントにあたった場合、裁判に費用がかかりますし、勝訴しても資金的余裕のないテナントからは滞納賃料を回収できない可能性もあります。
そのため、テナント審査は慎重に行うことが重要です。
滞納に悩んだときは不動産鑑定士にも相談
さて、賃借人が賃料を支払わない場合、オーナーにはさまざまな選択肢があります。
今回の事例のように、明け渡しを狙う場合もありますし、入居してもらったまま滞納された賃料の全額回収を目指すのも選択肢の一つです。
もし賃料・地代などを滞納されているものの、どのような手を取るのが有効か分からない場合には、ぜひ一度当事務所にご相談ください。これまで地主・不動産オーナーをサポートしてきた経験を活かし、最適と考えられる戦略をアドバイスさせていただきます。

