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こんにちは。不動産鑑定士の三原です。このサイトでは、地主さん向けに役立つ情報をお届けしています。
土地を売りたい場合、買主を見つけるために仲介業者に依頼することが一般的です。
しかし、仲介業者が紹介してくる買主が「三為業者(さんためぎょうしゃ)」である場合があります。この三為業者との売買契約を「三為契約(さんためけいやく)」と呼びます。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、今回はその仕組みや注意点について詳しく説明していきます。
三為契約とは、売主と買主の間に三為業者が入り、売主は三為業者と、三為業者は買主とそれぞれ売買契約を結ぶ形です。
三為契約は「第三者のためにする契約」の略で、民法537条・538条に基づきます。
民法537条(第三者のためにする契約)
契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
2 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
3 第一項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。
民法538条(第三者の権利の確定)
前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
2 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第一項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
参考:民法|e-Gov法令検索
通常の不動産取引では、不動産会社が仲介に入り、売主と買主が直接売買契約を結びます。
一方、三為取引では、「売主と不動産業者」「不動産業者と買主」がそれぞれ売買契約を結ぶことが特徴です。
さらに正確にいうと、売主と三為業者が締結するのが「第三者のためにする契約」です。不動産会社が、買主(第三者)のために、売主と契約するということですね。
そして三為業者と買主は、「他人物売買契約」を締結します。
なお、三為契約では、不動産の所有権が売主→三為業者→買主と移っているように思えるかもしれません。
しかし三為業者は、売主と「第三者(買主)のための売買契約」を結び、買主とは「他人(売主)のモノを売買する契約」を結んでいるため、三為業者には所有権が移転しません。そのため売主→買主へ、所有権の移転登記を直接行えるのです。
平成17年3月に新不動産登記法が施行され、従来の中間省略登記は事実上使えなくなりましたが、この三為取引なら登記を省略できるとして、「新・中間省略登記」とも呼ばれています。
三為契約の目的は、三為業者が転売益を得ることです。
不動産会社が仲介する場合、その仲介手数料は宅建業法において、次のように上限が定められています。
契約金額(税別) | 仲介手数料の上限額 |
200万円以下 | (契約金額×5%)+消費税10% |
200万円超 400万円以下 | (契約金額×4%+2万円)+消費税10% |
400万円超 | (契約金額×3%+6万円)+消費税10% |
たとえば契約金額1億円の不動産を仲介する場合の上限額は、(1億円×3%+6万円)+消費税10%=333.6万円です。
一方、売買契約の場合、取引価格に規制はありません。
たとえば売主と7,000万円で「三為契約」を結び、買主と1億円で「他人物売買契約」を結べば、差額の3,000万円が三為業者の利益です。
三為業者の利益率は15〜30%といわれていますので、仲介手数料の上限額と比べると、三為契約は不動産会社にとって「効率のいい仕事」といえるかもしれません。
三為業者は土地を一時的に所有するのではなく、買主からのお金を受け取り、その一部を利益として抜き取り転売するだけですから、リスクや手間が少なく、税金などの費用もかかりません。
業者からするとメリットの多い三為契約ですが、地主(売主)からするとデメリットが多いことも事実です。代表的なデメリットを見てみましょう。
デメリットの1つ目は、単純に転売されることで、もっと高く売れたはずという心情的な悔しさが残ることです。
三為契約においては、売主は最終的にその土地がいくらで転売されたかを知ることができません。(買主もまた、売主との直接的な関係がないため、お互いの詳細は見えない取引になります)
また、三為業者としても、利益を得るためには相場より安い金額で不動産を仕入れる(三為契約を結ぶ)必要があります。
先述した例のとおり、最終的な買主には1億円で売れる不動産であるにも関わらず、三為業者と7,000万円〜8,000万円程度の金額で契約してしまったら、地主にとっては大きな不利益といえるでしょう。
2つ目のデメリットは、契約が不安定になる可能性です。三為取引では、転売先の買主が誰であるのかや、支払い能力が不明な場合、契約完了まで安心できません。
そもそも三為業者は、不動産を買い取るお金を持っていないケースがほとんどです。
(買取代金を用意できないので、三為しているという業者もいます)
このような状態で、もし転売先が見つからなかったら、どうなるでしょうか。
Webサイトによっては「たとえ転売先が見つからないとしても、三為業者は売買契約書どおりに不動産を買い取る」などと記載していることもありますが、実態としては、三為業者は買取代金を持っていない可能性が高いです。
そのため転売先が見つからない場合、契約締結日をダラダラと引き延ばされ、いつまでも売却ができないということになりかねません。
これは売主にとっては、大きなデメリットといえるでしょう
3つ目は、売主に不利な契約条件が含まれる可能性がある点です。例えば、物件に欠陥があった場合、三為業者が責任を負わず、売主に責任が押し付けられる契約内容になっていることがあります。
今回の解説で、三為契約についてのリスクを理解していただけたかと思います。特に売り急ぐ理由がない場合、他の仲介業者と比較して、より良い条件の買主がいないか検討することも重要です。
中には悪質な三為業者もいるため、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。もし三為業者と思われる不動産会社から土地・物件の買取金額を提示されたら、その金額が不動産の価値を正しく反映しているか、不動産鑑定士に相談してもいいでしょう。
三為業者とのトラブルを取り上げたドキュメンタリー動画もリンクを貼っておきますので、ぜひご覧ください。
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